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山田淳一郎さんのトクする税金の話

第111回 生前贈与のための新相続税制−中級編
新制度で贈与を受けた財産を、
相続発生後に売却したら「譲渡の特例」

相続税を支払うために相続した土地を売る。
よくあるケースですが、
たとえ相続税を払うための売却であっても
売却益にはしっかり所得税と住民税がかかります。
相続税は相続税、所得税は所得税、というのが原則なのです。
とはいえ、やはり税金(相続税)を払うために売るのですから
多少は考慮すべきだろうということで、
実は相続財産の売却に関しては
譲渡の税金の計算に関して特例があります。

相続で取得した財産を
相続開始日の翌日から
相続の申告期限後3年経過する日までの間に売却した場合には、
一定の相続税を取得費に加算できるというもので、
「相続税の取得費加算の特例」といいます。
取得費が大きくなれば、
その分所得税等の課税対象となる売却益が小さくなりますので
結果として譲渡の税金が安くなります。

この「取得費加算の特例」は、
相続で取得した財産を譲渡した場合だけでなく、
新制度を利用して
生前に贈与を受けた財産を
相続後に売却した場合にも適用できます。

つまり、新制度を利用して土地の贈与を受けたが、
贈与者である親の相続の際に精算したところ
既に支払った贈与税では足りなくて
相続税を支払わなくてはならなくなった。
そこで、贈与された土地の一部を売却し
その代金で納付する、という場合にも
この特例を利用して
譲渡に対する税金を安くすることができます。

また、この特例は必ずしも
相続税の納付のための譲渡でなくても使うことができます。
したがって、たとえば新制度による生前贈与や
相続でたくさんの土地を取得した相続人が、
自分の資産構成について何も全部土地で維持しなくてもよい、
一部は売却して現金化した上で運用したいと考えるならば、
相続の申告期限後3年経過する日までに
売却することをお勧めします。
この特例を利用すれば譲渡の税金を抑えて
(ゼロになる場合もあります)資産を効率的に現金化できます。

(参考)取得費として加算できる相続税の計算
1.売却した財産が
  土地(借地権を含む)以外である場合の加算額
  その財産にかかった相続税であり、次の算式で計算します。

2.売却した財産が
  土地(借地権を含む)である場合の加算額
  その人が取得したすべての土地にかかった相続税であり、
  次の算式で計算します。

※1および2で計算した金額が
  売却益を超える場合は売却益を上限とします。

執筆:税理士法人山田&パートナーズ 税理士 壽藤里絵
監修:公認会計士 山田淳一郎


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