山本理さんの「男が語る美容に効く話」

第15回
見えないものが見える人

自慢ランキングの最下位に挙げた、不幸自慢ですが、
これは、学歴や職業、家柄自慢よりもよくないように思います。
みんなが聞きたいのは楽しい話しですから、
口を開けて笑える話題を提供してくれる人のほうが
やはり、人が寄ってくるようです。

たとえば、現在勉強を教えている中学生は
「俺はクラスの人気者」と自分で言っていますが、
彼を見ていて、私はそうだろうなあと思いました。

本人の話しが面白いのも勿論ですが、
私が何を言ってもよく笑うんですから、気持ちよく喋れます。
そうすると、いい子だなあと好感を持ちますものね。

さて、本題の不幸自慢ですが、
ご本人は人から同情を買いたいのでしょうが、
買い手がつくことは、まず期待できません。
「人の不幸は蜜の味」と云いますが、
やはり健康的なことではありませんから、
長々と聞かされるとうんざりします。

そして、私は次のような経験をしたことがあります。
ある60代後半のオジサン。
お話ししていて、純朴な人柄が伝わってきたのですが、
「コレを見てくれ」と言うと、上着のボタンを外し始めました。
遠山の金さんは背中の桜吹雪を罪人に見せましたが、
その男の人は、はだけた胸を私に見せました。

何のことだかサッパリわかりませんでしたが、
幼い頃に、大変な火傷を負ったと云うことで、
ケロイド状態になっていると云うのです。

「ここがヒドイだろ?」
オジサンが指差すその場所を見てみましたが、
火傷の跡もなくきれいなお肌です。
ですので、そう答えると、
「いやある筈だ」の一点張りなのです。

その一部始終を見ていた私の友人は
あとで私に
「アノ人は過去の不幸を同情して欲しいのだろうなあ」
と言いました。

おそらく、オジサンは彼の母親に
いつもその火傷のことを口にしたのでしょう。
だから責任を感じたのでしょうが、
母親は亡くなるまで、彼女自身の不注意を悔いていたそうです。

見える筈もない火傷が見えたそのオジサンは
過去に生きていたのでしょうが、
私には喜劇でもあり悲劇でもあるように思えました。


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