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          第28回 
          宗教が人の心を捉える 
         困ったときの神頼みと云いますが、 
          常日頃から信仰の篤い方っておられますよね。 
        私自身はそういった方面に疎いのですが、 
          年配のお客様のお家へ伺ったときなどに、 
          さまざまな宗教を信仰されている方たちから 
          それぞれの宗教の良さをお聞きました。 
          部外者の私がその方たちに共通して感じたことは 
          長年の信仰に培われた確固たる信念なるものをもっておられ、 
          答えが一つではない人生の道を 
          その教えが照らしてきてくれたのだろうな、ということでした。 
        ところで、海外の名作といわれるような小説を読んでみると、 
          大抵何らかの形で宗教の話が出てきますが、 
          それに対して、日本の小説で宗教に触れた作品に 
          お目にかかることはほとんどありません。 
          これは日本人の宗教心がよその国よりも薄いというよりも 
          新渡戸稲造の「武士道」にあるように、 
          ヨ−ロッパの学校で行われる道徳教育、つまり宗教教育が 
          恥の文化とも云われる日本では武士道にあたり、 
          子供が幼いころから、学校ではなく、家庭や地域で 
          その心の伝承が行われてきたと云う、 
          土壌の違いがあるのでしょうね。 
        その日本では、多くの人が年齢を重ねるにつれて 
          健康祈願やご先祖様へのお墓参りなどで、 
          神社やお寺へ足を運ぶ回数が増えることを見てもわかるように 
          今後、高齢化が一層進むにつれて、 
          心の隙間産業と云える宗教に 
          スポットライトが当てられる機会が増えるのでしょうね。 
        たとえば、定年になってから仏門に入る人が 
          ニュ−スで取り上げられることが、しばしばありますが 
          これも、人生の来し方行く末を考えるようになる時期に 
          自己の内面を見つめ直したいと考える人が 
          取る行動の一つといえるかもしれません。 
        そして、これからも心の隙間を埋めるべく、 
          宗教が多くの年配の方の心を掴むことに変わりないのでしょう、 
          私は先日、東京と大阪の、それぞれのメッカを訪れて、 
          自分の目でそのことを確かめてきました。 
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