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          第83回 
          儲け話の聞かされ損に遭う 
         年寄りでも好かれる年寄りと嫌われる年寄りがいます。 
          話の長い人は嫌われる典型的パタ−ンでしょう。 
          これは誰にでも身に覚えがあるのではないでしょうか? 
        数日前にこんなことがありました。 
          六十過ぎのヨレヨレの服を着たオジサンから道を尋ねられたのです。 
          私が答えようとしたその時、 
          オジサンが私の耳もとで囁きました。 
          「万馬券が当たってん」 
          「エッ?」 
          「×××万円になった」 
          「ヘエー、スゴイですね」 
          調子を合わせる私も私ですが、云うほうも云うほうです。 
          お酒臭いと思ったのはどこかのお店で 
          祝杯を挙げたからにちがいありません。 
          「こんなに儲かったから十万円あげようか?」 
          幼い頃、見知らぬオジサンが話しかけてきても 
          相手をしてはダメだと 
          学校の先生や親に云われていたことも忘れ、 
          私は一瞬、心が浮わついてしまいました。 
        最初からわかってはいましたが、  
          オッサンは得をしたことを誰かに喋りたかっただけでした。 
          私が「ヘー」とか「ホー」とか 
          合いの手を入れたのがいけなかったようです。 
          それがオッサンの気分を良くしたらしく、 
          いつまで経っても話が終わりそうにありません。 
          とうとう、しびれを切らして、 
          「万馬券が当たったなんて、 
          人に云わないほうがいいですよ」 
          なんて、余計な口を利いてしまいましたが、 
          儲け話で始まり、儲け話で終わったこの話は 
          私の聞かされ損に終わりました。 
        きっと、このオッサンは 
          アルコ−ルが入っている所為もあったのでしょうが、 
          年配の方には独演会のように 
          三十分、一時間と一方的にお話しされる方がおられます。 
          私は身なりがジジくさいことよりも、 
          このことが一番年寄り臭く感じます。 
          人の話を聞く耳を持たないのと、 
          人の話題に合わせられないから 
          無意識に自分の話ばかりになっているのかもしれませんね。 
        しかし、十万円あげると云ったその時に、 
          「ありがとう」と私が云えば、 
          本当に呉れたのかな?と 
          少し気になる今日この頃です。 
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