私が始めて邱永漢さんにお目にかかったのは28年前です。
当時すでに直木賞作家でおられたのですが、
世間的にはまだそれほど有名とはいえなかった。
その後はマスコミが勝手につけた
「株の神様」「金儲けの神様」で有名になられ、
最近では著作に講演にと、
一種の「邱永漢ブーム」といってよいでしょう。
私は最初著書を何冊か読み、
邱永漢さんの生き方・考え方に共鳴し、
またそのお人柄に魅かれたせいでしょうか、
お金儲けの話をされても品がある、さわやかさがある、
人間として深い、こんな人に初めて会いましたよ。
わたしの永い銀行員生活の中で、
多くのすばらしい方との出会いがありました。
おかげさまで、本当に偉い人かどうか見分ける、
いわば、人の見方というか、
判断するモノサシみたいなものを教えて頂きました。
難しいことを難しくいうヒトはともかく、
易しいことまでヨコ文字使ったりして
難しくいうヒトが多いのですね。
学者先生や、自称インテリに多いようですが…
私は難しいことを、
ダレにでも、分かりやすく話して下さる人が
一番偉い人だと思うんです。
物事を本当に深く理解しているからこそ、易しく話せるのだし、
また愛情が豊かだからこそ、
話し方など表現に工夫があるのでしょう。
このモノサシに従えば、
邱永漢さんは「金儲けの神様」などという
軽い存在ではなくて、
大事な人間の生き方を身をもって示して下さる、
いわば「人生の達人」と私は評価させて頂いているのです。
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