それは邱永漢さんでした、
と申し上げたらご本人は苦笑されることでしょうね。
邱さんは今、週刊誌・月刊誌に連載を10本、講演は年300回前後、
新聞には連日大きな顔写真が載っているという超多忙人間。
その邱さんが一切の仕事を離れて
17日間、たんたんと旅を楽しまれている様子に深く感じ入りました。
ふだん原稿は新幹線か飛行機の中で書かれる。
集中力が抜群だから、レパートリーもひろく、
かつ中味の濃い仕事が出来るのでしょうね。
そして海外へ出たらパッと気分を変えて旅を楽しむ、
この転換力というか、人間力。
またお買い物上手なのに感心しました。
コペンハーゲンで最高級の食器を求められました。
「私は骨董品は買いません。
日常の生活を豊かにしてくれる一流品を買います。
一流のものはアキがこない。
値段は高いようだけれど、毎日楽しんで使えば
一日当たりいくらになりますか、ものは考えようですよ。」
と話して下さった。
同行者がみな驚いたのは、
邱さんが、たいへんオシャレなことでした。
TPOに合わせた心憎いダンデイぶりに
「さすがぁ」の声が。
私も前々から邱永漢さんこそ
ベストドレッサー賞を受けるにふさわしい人
と気がついていました。
ぜひ「中年からの男のオシャレ」という本を書いて下さい、
とお願いしましたら笑っておられました。
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