第72回
ネクラ人間・明るく振舞う
山崎は子供の頃から母によく言われました。
「きよし、あんたはマジメかバッテン暗か、
もちっと朗らかにせんば」
体も細く、内気な性格で人前に出るのが苦手でした。
今で言うネクラなタイプでした。
学生時代は、商社やデパートを志望していましたが、
接客が苦手では無理、銀行員はマジメでコツコツのイメージ、
消去法での選択でした。
コレが大きな間違いと、気付いたのが入行3年目、
内部事務から、外交(いまは営業)へ
配置替えになったトタンでした。
3ヶ月間、一件の契約も取れませんでした。
ああ、銀行は人間相手のサービス業なのでした。
そんな山崎が、20年後、なれる筈がない支店長になり、
鏡に向ってスマイルの練習を繰り返します。
「明るく、明るく、私は大きく変る」
と自分に言い聞かせていました。
そして、山崎は「明るく振舞う」ことにしました。
性格は変らない、しかし努力して繰り返せば、
それが習慣になり第二の性格になる筈と確信しました。
心も大切だが、態度・表情、「明るく振舞う」ことが大事ですね。
S学園の幼稚園から小学校卒業まで、クラス替えなし
7年間の同級生・観世正司君(観世流家元・元正)からもらった
能楽の本の中に「形より入れ」の言葉に出会い、
考えさせられました。
また心理学の本にも
「悲しいから泣くのではない、泣くから悲しいのだ」
を見つけました。それならその逆もまた真なり。
「笑ってみよう、楽しくなる」
その通りになりました。
それからしばらく経って、総務係の女性と話していたら
「このごろ、支店長さんを訪ねてこられるお客様が
とても増えましたね」というのです。
「オヤ、そうかね」と云いながら嬉しくなりました。
そして「やっぱりね」と自分で納得しました。
そのころからでした。
スタッフの表情が明るく、
様子も伸び伸びとして動きが良くなってきました。
報告をマメにしてくれるようになり、
前向きの提案がドンドン出てきました。
職員も食堂で気軽に話しかけてくれるようになりました。
業績は上向きになり、連続表彰のスタートになりました。
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