第20回
「認知症でも治るものがある?」
以前から治るぼけというようないい方をされている、
認知症と同じような症状の病気があります。
認知症の定義からすれば、
「獲得した知的なレベルが低下し、進行で治ることはない」
ということですから、
治るぼけというのは意味がおかしいのですが、
実際には臨床的には経験することです。
有名なものとして甲状腺機能低下症があります。
これは内科医がもっとも見落としやすい疾患としても有名です。
なんとなく元気がない、足がむくむ、コレステロールが多いなど、
他の病気でも起きるような症状なので、
見落としてしまうのです。
診断は血液の中の甲状腺ホルモンを測ればすぐにできます。
検査は開業医でも簡単にできます。
重要なことはこの病気を疑うことです。
甲状腺ホルモンが足りないために起こる
認知症のような症状ですから、
ホルモンを補うことで、治っていきます。
認知症を疑ったときは、
甲状腺ホルモンを測るのは基本です。
うつ病も
認知症なのか、うつ病のために同じような症状になっているのか、
迷うことが多い病気です。
とくに高齢者では典型的なうつ病の症状ではなく、
頭痛、足がしびれるというような症状が多いので、
そこに認知症の症状があると、
うつ病を疑うことなく、認知症と診断され、
抗うつ薬を使うことが遅れてしまうことがあります。
とくに認知症の初期では、
ただやる気がないように見えることもあるので、
診断のために、抗うつ薬を使う場合もあります。
いずれにしても、
こういった認知症と同じような症状を出す病気は、
医者がまず疑わないことには見落とされたり、
治療が遅れることになります。
やはり認知症を疑ったときは
専門の医者つまり神経内科、
精神科や老年科を受診すべきでしょう。
ぼけてきたら治らない病気と思わないで、
原因をしっかり調べないとだめなのです。 |