第56回
思い出の音楽を聴く
忘れることは脳の重要な機能です。
どうももの忘れを問題にしがちですが、
私たちは忘れることができるので、
再び立ち上がれるのです。
ただ時には昔の記憶を確かめておくことも脳には必要です。
忘れるはずがないと思っていた青春時代の大切な思い出も、
次第に曖昧(あいまい)になってしまいます。
懐メロを聴いて懐かしいという気分になれるのは、
音楽というのは、
瞬時に昔の感情を引き出すことができるからです。
悲しい、うれしい、感動した
という感情が動かされた記憶はしっかり記憶され、
消えることのない記憶になっています。
その記憶は音楽と結びついていれば、
同じ音楽を聴くことで、
そのときの感動した記憶もよみがえってくるのです。
逆に言えば、
記憶をよみがえらせるたくさんの曲を知っているかどうかも、
高齢になってくれば、重要になってくるものです。
いまのデイケアを行っている介護施設では、
年齢的にどうしても童謡や文部省唱歌が中心になってしまいます。
私たちの世代では、
ジャズやスタンダードナンバーといったもののほうが、
感情移入して記憶をよみがえらせることができるはずです。
映画音楽などは、
映画のワンシーンと音楽が強く結びついているので、
記憶を刺激するにはぴったりです。
いまのうちから、もっと音楽に興味を持ち、
自分が好きな音楽の分野を広げておくほうが、
歳をとってから、楽しみが増えるはずです。
クラシックなどあまり聴かないとすれば、
意識的にたくさん聴くようにしてみましょう。
記憶を思い出すツールを増やしておくことは、
老後に備えることにもなるのです。 |