第110回
禁煙のチャンス
禁煙はもっとも重要な健康法と言えるでしょう。
タバコの値上げがあって、
私のところの禁煙外来にも、
いつになく患者さんが多いようです。
今はニコチンガムやパッチより、
チャンピックスという薬が使われます。
この薬を飲んでいると、
タバコを吸っても気持ちがよくないので、
自然に喫煙をやめてしまうのです。
従来、禁煙はニコチンの禁断症状があって、
それを乗り切るのに、非常に大変な思いをしたものですが、
今はこういった薬が使えるようになり、ずっと楽になりました。
しかし、問題は禁煙という行動を起こすことが大変なのです。
禁煙行動を起こすには、
タバコがからだに悪いことをいくらわかっていてもダメなのです。
知識だけでは、
なかなか禁煙行動を起こすことはないのです。
今回は100円以上のタバコの値上がりが、
経済的に負担がかかると思い、禁煙をする人が増えたのですが、
これは冷静に考えれば、
喫煙していると病気になる確率が上がり、
医療費がもっとかかりますし、
仕事を休んだり、辞めたりしなければいけないとなれば、
タバコの値上げの分など、
比較にならないほどの経済負担になるはずです。
人は一ヶ月後のことより、
明日のことを行動目標にしてしまうのです。
今回の値上げが禁煙のきっかけを作ったのは、
よかったと思いますが、
こういった健康への取り組みの難しさを
証明しているように思います。
コレステロールが高いと動脈硬化が進むといくら説明しても、
なかなかコレステロールを下げる薬を飲もうとしないのも、
目先の目標設定が難しいからなのです。
頭痛や胃の痛みは、薬を飲むことで、
すぐに症状の改善がありますが、
生活習慣病のリスクとなる、
高血圧や高脂血症は自覚症状がないので、
なかなか行動を起こせないのです。 |