第46回
湖南人
「動乱の時には必ず湖南人の姿がある」
と言われるほど、湖南人は乱世に強いです。
世の中は混乱すればするほど、湖南人が出世します。
近代中国を見ても、湖南は軍事家、政治家を輩出しています。
清の時代に自ら「湘軍」(注:湘は湖南の略称)を組織し
「太平天国」の乱を治めた秀才曾国藩は
両江総督、文部次官まで上り詰め大きな功績を残しました。
中華人民共和国建国の父である毛沢東は
まともな武器も持たない農民の軍隊を率いて
米国の最新鋭武器で武装された蒋介石の百万大軍を打ち破り
天下を取りました。
湖南人なしでは近代中国史を書くことができません。
「造反有理」は毛沢東の有名な言葉ですが、
別に毛沢東の発明ではありません。
湖南人は従来から造反が好きです。
湖南人は「乱世の雄」と言っても過言ではありません。
湖南人は災いを恐れず、「ノー」と言える人種です。
湖南人は中国伝統文化の
「以和為貴」や「中庸之道」などと相容れないようです。
湖南人の性格特徴をまとめると、率直且つせっかちと言えます。
こういう話がありました。
ある湖南商人と広東商人は交渉の末、ようやく合意に至りました。
しかし、いざ契約をサインするときに、
広東商人はなかなか筆を下ろしてくれませんでした。
「もう合意したから、何をためらっているか」
と湖南人は焦りました。
広東人は微笑みながら
「もうちょっと考えさせて」
といいました。
「契約をしないというのか」
と湖南人はますます焦りました。
広東人は相変わらず微笑ながら
「そうじゃないけど、もうちょっと考えさせてください」
といいました。
「君のような商売の仕方では戦いに勝つわけはない」
と湖南人は怒り出しました。
「これは商売だろう。戦争じゃないよ」
と広東人が言い返したら、
「戦争があれば、お前のような広東人と商売しないよ。
もうやめた!」
と契約を投げ捨て湖南人はかんかんとなり出て行きました。
湖南人はすぐ賭けに出るのが好きです。
上海人や広東人、また福建人は
大きなリスクを取らず少しずつ稼ぐことに余念がありませんが、
湖南人はこれと思ったら、
全財産を投じて勝負に出ることが多いようです。
商売で大きな成功を収めた湖南人は少ないですが、
軍人のような豪快さは財界で有名だそうです。
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