中国投資の羅針盤・阿部享士

阿部享士さんがご案内します

第2回
中国政府は本当にしたたかです

2010年6月19日、中国の中央銀行にあたる中国人民銀行は、
「人民元為替レートの弾力性を強める」とする声明を発表しました。

人民銀行は2005年7月にも
実質的に米ドルにペッグしていた人民元の為替制度を廃止し、
複数の通貨を組み合わせた通貨バスケットに連動する、とし、
人民元の穏やかな上昇を容認。
人民元の対米ドルレートは
8.27元から7元を切るところまで切り上がりましたが、
2008年夏に勃発した米サブプライムローン問題を契機に、
世界が未曾有の大不況に突入すると、
中国政府は一転して人民元の上昇を断固として阻止。
約1年半にわたり1米ドル=6.85元前後で
為替レートはほぼ固定してきました。
この理由は簡単で中国の輸出企業を保護し国益を守るためです。

先の世界的金融危機にあたって
中国と対照的な動きをとったのが日本でした。
当時の鳩山民主党政権は、円高を阻止するどころか、
明確な経済戦略を示せないまま、
ズルズルと円高を容認したため、日本の株価は急降下。
デフレで内需がしぼむなか、
唯一、日本経済の成長原動力となっていた
輸出産業に大きなダメージをあたえました。
円高はその後の菅政権になってもとどまるところを知らず、
これに連れて日経平均も安値を更新する局面が続いていますが、
どこの国の政府でも
為替レートを自国産業に有利な方向に誘動する
ダーティ・フロートは常識です。
こうしたことをみても日本の政治家の無為無策ぶりが分かりますね。

過去1年半にわたり人民元上昇を阻止したことにより、
中国は景気回復という目的を他の国に先駆けて達成。
いまではバブルかといわれるほど
景気過熱が心配されていますが、
これを抑える方法として中国政府は利上げでなく、
人民元の切り上げを選択しました。
元の切り上げによって、貿易黒字が減少すれば、
過剰流動性が縮小するからです。
元の切り上げにはまた、
中国製品の価格競争力を損なうデメリットがある反面、
対外購買力を高めるため、内需を押し上げる効果もあります。

為替レートについての海外からの批判をかわしながら景気を抑制、
さらに内需を拡大させ経済構造の改善を狙う。
今回の人民元の切り上げにはこのような目的があります。
中国政府は本当にしたたかです。


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2010年8月27日(金)

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