中国投資の羅針盤・阿部享士

阿部享士さんがご案内します

第3回
中国にとっての人民元切り上げのメリット

日本の報道をみていると、
今回の人民元は中国がアメリカを始めとする諸外国の圧力に屈した、
との論調もあるようですが、
元切り上げはあくまで中国の国益に沿ったものです。
今回は人民元切り上げの
中国経済にとってのメリットを考えてみましょう。

人民元の切り上げのメリットの一番目は
内需拡大を通じて経済構造を改善できることです。
一般に通貨の切り上げは
中国製品の価格競争力を損なう一方で、
対外購買力を高め、内需が押し上げるとされますが、
中国の消費がGDPに占める比率は約5割にとどまっています。

中国の経済において、
これまで消費が低迷してきた理由として、
将来の生活不安に対する備え、住宅・医療・教育・
養老などの制度の未整備などが挙げられ、
これを是正することは簡単ではありませんが、
元の切り上げは、経済成長のエンジンを
外需から内需に転換させる有効な手段となるはずです。

バブルの抑制にも人民元の切り上げは有効です。

中国において資産価格、とくに不動産は上昇を続けており、
今年7月の全国主要70都市の不動産販売価格は前年比10.3%上昇、
14カ月連続のプラスとなりました。
こうした資産価格の急上昇の原因は過剰流動性にあり、
これは大幅な貿易黒字によってもたらされた外貨を
人民元に交換することによって生じたものですが、
元切り上げによって貿易黒字が減少すれば、
過剰流動性を縮小させることができると考えられます。

さらに、人民元の切り上げはインフレ率を抑制する効果があります。

今年7月の消費者物価指数が前年同月比で3.3%の上昇。
これは9カ月連続のプラスで、
6月(2.9%の上昇)に比べ上昇率が拡大。
中国政府が上昇率の年間目標とする3%を2カ月ぶりに上回り、
インフレ懸念が再燃する可能性がでてきています。
人民元切り上げは景気や輸入物価の上昇を抑えるだけでなく、
上述した過剰流動性の縮小を通じて、
インフレ率抑制にも貢献します。


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2010年8月30日(月)

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