中国投資の羅針盤・阿部享士

阿部享士さんがご案内します

第4回
人民元切り上げが人手不足を解消

人民元切り上げの4番目のメリットは
内陸部への経済支援効果です。

元切り上げによる景気抑制効果は
輸出企業が多く林立する沿海部で大きいと考えられますが、
価格競争力を維持するため、
メーカーが人件費の安い内陸部への進出を加速させれば、
同地域の経済が活性化することになります。

2009年の内陸部の経済成長率は沿海部に迫るほど伸びており、
両者の格差の拡大に歯止めがかかりつつあります。
これは4兆元の財政出動に代表される
中央政府の景気刺激策の効果による一時的な現象かもしれませんが、
貴州省や甘粛省などでキャリアをつんだ現国家主席の胡錦濤氏は、
社会的安定の観点などから、
内陸部の経済成長をことさら重視しているといわれるため、
こうしたテコ入れ策は今後も継続すると思われます。

そして、5番目のメリットは現在、
中国の課題として挙げられている人手不足を解消させ、
製品のクオリティーアップを促すということです。

昨今、報道されている中国の人手不足は
労働集約型輸出産業を中心に広がっていますが、
海外からの需要が増加している原因は、
人民元レートが低めに誘導されていることにあるので、
これを引き上げれば製品価格も上昇、結果、需要が抑制され、
人手不足も解消されます。
また、切り上げにより価格競争力が低下することは、
より高度で付加価値の高い輸出製品にシフトするきっかけを
メーカーに与えることになります。

日本のメーカーは1980年代の円高のプロセスのなかで、
製品のクオリティを上げ、付加価値を高めるために、
技術改良を地道に重ねてきましたが、
中国で起きている品質向上のプロセスは
日本と違ったものになるでしょう。
「安かろう、悪かろう」というイメージ払拭のため、
日本がしたように一歩一歩技術を向上させるやり方ではなく、
これまで儲けたお金を有効活用し、優良企業をM&A、
一足飛びにクオリティーアップを実現しようとします。

今年3月、香港市場に上場している『吉利汽車』(00175)が
スウェーデンの自動車メーカー 『ボルボ』を18億米ドルで買収し、
世界を驚かせましたが、
今後、同様のケースが増えるとみて間違いないでしょう。


←前回記事へ

2010年9月3日(金)

次回記事へ→

当ページは、投資勧誘を目的として作成されたものではありません。
あくまで情報提供を目的としたものであり、一部主観及び意見が含まれている場合もあります。
個別銘柄にかかる最終的な投資判断は、ご自身の判断でなさるようお願いいたします。


過去記事へ 中国株 起業 投資情報コラム「ハイハイQさんQさんデス」
ホーム
最新記事へ