第8回
為替レート上昇が各セクターに与える影響(3)
☆鉄鋼/切り上げの影響は一長一短
人民元の切り上げは国内の各鉄鋼メーカーにとって
一長一短となりそうです。
中国の鉄鉱石輸入量はこのところ急増しており、
通貨価値の上昇で買付価格が低下すれば、
生産コストも軽減されます。
上場企業における鉄鉱石の購入比率は
平均で7(輸入)対3(国内)となっており、
仮に人民元レートが5%及び10%切り上がった場合、
1トン当たりの生産コストはそれぞれ18元、
36元低下するとの試算もありますが、
同時に海外製品の価格も低くなるため、
市場競争が激しくなる可能性があります。
☆自動車/コスト削減効果は限定的
為替レートの上昇は輸入車価格の低下を促し、
市場競争の激化が懸念されます。
また、このところ国内メーカーは
国産化比率を上げてきているため、『BMW』を生産する
『ブリリアンスチャイナ』など、一部のメーカーを除いて、
パーツなどの価格低下がコスト削減に寄与する割合は
限定的なものになりそうです。
☆石炭/需要増が為替差損を吹き飛ばす
国内メーカーから生産される石炭のほとんどは
国内市場で消費され、輸出に回る分はわずかなことから、
大きな影響は受けないと予想されます。
鉄鋼などのインフラ素材も同じですが、
石炭価格は基本的に需給バランスによって決まるため、
人民元のレート変化が石炭企業の業績に与える影響は
ごく少ないと思われます。
☆紡績(アパレル)/粗利益の低さが欠点
人民元の切り上げで最もデメリットを蒙るのは紡績業界でしょう。
中国のアパレル関連企業の問題は、
完成品などの川下製品の製造を手掛けているところが多いため、
市場競争の激化にともなう製品価格の値下がりにより、
粗利益率が非常に低くなっていることです。
また、 輸出製品の決済は米ドルで行われているため、
人民元が切り上がるとおのずとメーカーの収入は減少します。
仮に向こう1年間で人民元レートが5%上昇すると、
関連メーカーの売上総利益率は
3〜4%低下するとの予想もあります。
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