第11回
IPOと株式市況の相関関係
2010年上半期における香港マーケットのパフォーマンスは
おせじにも良好とはいえませんでしたが、
IPO(新規株式公開)は依然、活発でした。
同期には24社が上場しましたが、これは昨年同期の約2倍で、
その調達金額も433億9000万香港ドルと
前年同期の189億9000万香港ドルを大きく上回りました。
世界経済の先行きに対する不安がくすぶるなか、
力強い成長を続けている中国経済(企業)に対する期待が
素直に表れたかたちです。
上場初日の終値ベースでの騰落率を見ても
発行を割り込んだのは24社中、8社のみで、
ほかはすべてこれを上回っています(別表参照)。
下半期は7月に上場した『農業銀行』(01288)を筆頭に、
大型企業のIPOが予定されているため、
需給バランスに対する懸念が浮上していますが、
IPOの増加は少し長い目でみれば
次の点から市場にプラスの効果をもたらすと考えられます。
1.欧米マネーの流入増:
銀行など、大型株のIPO主幹事は
シティグループ、ゴールドマンサックス、
モルガンスタンレー、BNPバリバなど、
中国に太いパイプを持つ
外資系の証券会社が努めるケースが多く、
彼らはIPOを成功させるためにも、
顧客から多額の資金を集め香港に誘導するため、
市場への流入資金が増加します。
2.お金の好循環が生まれる:
先に述べたように上半期のIPOはおおむね堅調で、
多くの銘柄が好デビューを飾っていますが、
この好調が維持されるなら
事業拡大のための資金を獲得したい企業と、
それを提供することで大きな儲けを得ようとする投資家、
両者の利益が一致。
香港市場が“お金がお金を呼ぶ”
好循環に入る可能性があります。
新規上場が増え、そのパフォーマンスも好調となれば、
株式市場が活況を呈すのはもちろん、
同カテゴリーに属する上場企業の株価も
新株の影響を受けて連れ高になり易くなります。
知り合いの香港の証券アナリストのなかには
1万9000ポイントをボトムに、ハンセン指数の年末までの目標を
2万4000ポイントに置いている人もいますが、
市況の先行きを占う一つの指標として
IPOの動向に注目してみてはどうでしょうか?
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