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         第31回 
          鉄鋼の需給バランスの回復はスローモー 
        今回は鉄鋼業界に少しスポットを当ててみましょう。 
          中国鉄鋼工業協会の統計によると、 
          今年上半期における中国の粗鋼生産量は 
          前年同期比21.09%増の3億2317万トンに達しましたが、 
          消費量は同14.53%増の3億721万トンと生産量を下回りました。 
          GDP成長率などから、 
          通年の生産量は6億2400−6億7800万トンと予想されますが、 
          今年に入り鉄鉱石価格が40%以上値上がりしていることもあり、 
          鉄鋼メーカーの収益の伸びは鈍化するとみられます。 
        2010年10月15日現在の 
          線材、熱間圧延鋼板(HRC)、冷間圧延鋼板(CRC)は 
          4305元、5315元、4305元となっており、 
          前年同期比ベースで24.2%、16.7%、25.1%となっていますが、 
          ローエンド製品を中心に需給バランスはルーズな状態にあり、 
          メーカーのプラント稼働率も 
          平均で85%程度にとどまっているのが現状です。 
        中国の鉄鋼メーカーは2004年頃から生産能力の拡大に着手。 
          多くのプラントが2007−08年にかけて稼働を開始したため、 
          供給量が一挙に増大。 
          そこに折からの金融危機の影響で需要が縮小したため、 
          在庫量が急増しました。 
          その後、国務院が重複建築の禁止や老朽化や 
          生産プラントの閉鎖などを盛り込んだ新条例(第35文)を発布、 
          実施したため、中長期的に需給バランスは改善しそうですが、 
          政府主導によるインフラ投資の一服や不動産建設の減少などを受け、 
          その回復ペースは当面、スローモーなものになりそうです。 
          世界鉄鋼協会に予測によると、 
          今年の全世界の鉄鋼消費量は前年比10.7%増にとどまるのに対し、 
          粗鋼の生産量は同27.9%増と供給が需要を上回っているため、 
          輸出量の伸びも期待できそうにありません。 
          家電や自動車業界からの引き合いが多い冷間圧延鋼板を除いて、 
          その価格は今後も横ばいが予想されています。 
           
          (次回に続く) 
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