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         第50回 
          マイホームブームは全国規模に 
        共産主義のもと全ての私有財産が没収されていた時代、 
          家は中国人にとって夢のまた夢でした。 
        家族で1部屋に住むのがやっとで、 
          トイレも風呂も共用というのが普通。 
          その代わり家賃は20元(約300円)ぐらいで、税金もなく、 
          サラリーとして支給されるお金は、すべて生活費に充てられます。 
          仕事は国が保証し、失業もない。 
          最低限の生活でも、路頭に迷うことはないし、 
          なんとか食べてはいけます。 
          ただし、働いても働かなくとも給料は一緒ですから、 
          勤労意欲などがわくはずもなく、 
          当然のことながら、生産性は非常に低い状態にありました。 
        しかし、そのような状況から一転し、 
          ケ小平の政権下、改革・開放が始まると 
          世相は大きく様変わりしました。 
          もともと中国人は勤勉で、計算高い民族ですから、 
          働いて儲けた分だけ収入になると分かると、 
          それこそ夜討ち朝駆けも厭わないようになり、 
          国全体が高度成長へ向けて動き出しました。 
        「経済が豊になり国全体が潤うなら、 
          一部の人が先に金持ちになっても良い」 
          というケ小平の「先富論」は、 
          中国人に受け入れられ易い考えですから、私有財産の復活と伴に、 
          13億人の全てが一斉に成金への道を走り出したのです。 
        私が懇意にしている不動産会社のオ−ナーの蒋氏などは、 
          典型的な“個体戸(ぐぅてぃふー)” 
          (脱サラして企業を起こした人)ですし、 
          個人の資産家が国有企業を買収したり、 
          外資と商売をしたりすることも自由になりました。 
        また、上海と深センに証券取引所が開設され、 
          株式投資が一般庶民に広まると、 
          これをテコに資産家の仲間入りする連中もでてきました。 
          最初はわずかなお金からスタートした資産運用も、 
          10年間でインデックスが 
          3倍近くまで上昇するような追い風が吹けば、 
          億万長者にのし上がる人も当然でてくるのです。 
          中国のマイホームブームは、 
          そうした人が多く集まる上海などの大都市から始まり、 
          全土に広がっているところです。 
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