中国投資の羅針盤・阿部享士

阿部享士さんがご案内します

第54回
中国では常時“13億総不動産屋”が当たり前

こうしたスピーディなインフラ整備や流動人口の増加を背景に、
上海の不動産価格は2000年を底に、
ここ数年は右肩上がり推移しています。
こうしたことから、識者の中には
「現在の上海不動産はバブルであり、必ず近いうちにはじける」
と予想する向きもありますが、
実際ここ1年ほどは平米単価も比較的落ち着いてきています。
政府から所得税額控除の廃止、
購入時および売却時の課税率を引き上げ、
などの冷やし球が適時投入されたためです。

上海では1990年代初頭にも住宅ブームが高まり、
1992年から1993年にかけて
住宅建設面積が年4割のペースで増加したことがありました。
しかし、一方で価格、立地、間取り、
などにおける需給のミスマッチ、
上下水道など基本インフラの未整備、劣悪な品質などが問題となり、
94年からは需要が急速に鈍化。
この第一次ブームは終焉を迎え、
不動産市場は長い低迷期に突入しました。

2000年から始まった今回の不動産ブームは、
中国の市場経済が軌道に乗るなか、
外国人、ローカルを含む実需と、マーケットの供給量がある意味、
適当に折り合いをつけながら
かもし出されたものと見ることができます。
上海地域への年間人口流入などをみると
需要としては30万戸程度必要であるのに、
実際は15万戸程度の供給しかない、との指摘もあります。

また、最近の高級物件は、
価格に見合うだけの品質を備えていますし、
中低価格帯のバリエーションも豊かになってきています。
また、中古市場が整備され、
買い替えが比較的簡単にできるようになったことも、
今回のブームを下支えする要因の一つでしょう。

上海市の面積は6241平方メートルで、人口は1400万人強。
1人当たりの平均住宅面積は13平方メートルにしか過ぎません。
古い家を売り払い、ローンを組んで新しい家を購入すれば、
住環境を向上させるだけでなく、
将来、物件価格の値上がりによるキャピタルゲインも望める。
こうした考えが上海市民に根付いた結果、
物件価格を押し上げているのです。

バブル期には日本でも
“1億総不動産屋”と評されることがありましたが、
中国では常時“13億総不動産屋”が当たり前で、
買い手だけでなく売り手も、
シロウト、クロウト合わせて
無数の人が参加した競争が展開されます。
その意味ではまぎれもない新興市場であり、
時に行き過ぎるきらいはありますが、
景気の先行き期待から
不動産市場の活況はいましばらく続きそうです。


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2011年2月25日(金)

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