中国投資の羅針盤・阿部享士

阿部享士さんがご案内します

第110回
負けが込むと一か八かのギャンブルにでやすいのが人間

しかし、これまでの妻の運用成績は
決して誉められたものではありませんでした。
相場が開いているときなどは、
それこそ目を皿のようにしてパソコンの前に座って、
売り買いを繰り返すものの、
期待するほどの利益はなかなかあがりません。
逆に手持ちの資金は減っていく一方です。
この理由はどこにあるのでしょうか?

アメリカなどでよく読まれているファイナンスの専門書を開くと、
運用の性格付けに関して
「貯蓄」「投資」「投機」「賭博」の4種類
明確に区別しています。
この定義に沿っていえば、
生活に必要な資金を「貯蓄」でつくった後に、
「投資」という資産運用の世界に入るべきであることは、
皆さんもうお分かりになっていると思います。

ところが、妻も含めた多くの個人投資家は、
相場に慣れたベテランであればあるほど、
「投資」の段階をスキップして、
「投機」や「賭博」にまで
一挙にジャンプしてしまう傾向があるようです。

彼女の行っているのはコインの裏表を当てるゲームと一緒です。
例えばコインを7回投げるとするなら、
「表裏裏裏表表裏」と「裏裏裏裏裏裏表」という順序では
どちらが実現しそうに思いますか?
直感的に前者と答える人の方が多いでしょう。
しかし、確率的にはどちらも同じなのです。
同様に「裏裏裏裏裏裏」と続いた場合には、
「表」に賭けたくなりませんか?
ところが、これも「裏」がでるのと確率的には同じなのです。

これは「賭博者の錯覚」として知られる
人間心理に根付いている強いバイアスで、
要するに、「数学的に計算された確率の通りに人間は動かない」
ということです。

「最初は小さな負けだったのだけれど、
それを取り返そうと投資を重ねるうちにどんどんエスカレート。
昨日、下げたのだから、今日は反発するはずだ、
と相場を張り続けているうちに損失を増大させてしまいました」
とは妻の反省の弁です。

人間というのは悲しいかな、
勝っているときには保守的に対応するのですが、
負けが込んでいるときには
一か八かのギャンブルにでやすい生き物なのです。

私たちはリスクを認知する際、
同じ金額であればもらえるよりも
損をする方に不快感を覚えるという傾向を備えています。
儲かったときは確実に利益が残るように手堅く行動するのですが、
損がかさんだときはこれを帳消しにする方に賭けたくなるのです。


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2011年9月9日(金)

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