第148回
国策に乗る中国の金属リサイクル業界
今回は中国の金属リサイクル業界について考えてみたいと思います。
供給量に余裕のあるアルミやニッケルなどを除いて、
中国におけるその他の非鉄金属の需給バランスは依然、良好です。
世界最大の銅消費国である中国の需給バランスは、
送電網建設の加速や家電需要の増加、
保障性住宅(政府が低中所得世帯に提供する廉価住宅)
などからの需要増を受けて、これからもタイトに。
製造業で不可欠な素材であるレアメタルの状況もほぼ同じで、
半導体産業ではタングステンやモリブデン、ニッケル、
自動車産業では白金やパラジウムは重宝されていますが、
これらは地殻中の存在量が比較的少なく、
単体として取り出すことが技術的に困難であるため、
業界への参入障壁が高いことが特徴。
最近では主な生産国である中国などが輸出規制をかけているため、
今後も価格は右肩上がりを描くと予想されています。
ただ、こうした非鉄金属の採掘には
多額の資金が必要であることや、環境汚染などの問題もあるため、
近年、省エネやCO2の削減を目的に
中国政府はリサイクル金属の使用を推奨。
その結果、リサイクル金属の生産量は2000年の72万トンから、
2010年には775万トンへ急増。
その内訳は、銅が240万トン、アルミが400万トン、
鉛が135万トンとなっていいますが、
「十二五計画」(第12次5カ年計画、2011-2015年)によると、
15年までのその生産量は1200万トンまでさらに増加。
銅、アルミ、鉛などの生産量も
380万トン、580万トン、240万トンへ、
それぞれ40%、30%、40%増加すると予想されています。
リサイクル金属の生産コストは
新生産(鉱物から生産されたもの)より低く、
銅などの場合、1トン当たりで石炭1054キログラム、
水395立法メートルが制約できるほか、
固定廃棄物の量も380万トン減らせるので、
環境に優しいという訳です。
今年の2月に中国工業信息化部、財政部、科学技術部は
「非鉄金属リサイクル業の発展推進計画」を公布。
2015年までに非鉄金属のリサイクル率を高めるとともに、
分解、溶解、環境保護などの技術レベルの
大幅引き上げを目指す、としていますから、
いずれにしてもこの業界の発展支援は国策です。
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