中国投資の羅針盤・阿部享士

阿部享士さんがご案内します

第187
中央政府から400億元の予算が投入される医薬業界

好評をいただいているセクター分析。
今回は「医療業界」にスポットを当ててみました。

原材料価格の上昇や政府主導による薬価の引き下げ、
抗生物質の使用制限など、マイナス材料が多く出たことから、
このセクターの関連企業の収益は下降傾向。

医療保険制度の拡充にともない、
薬価の引き下げは今後も続きそうですが、
間もなく発表される「バイオ医薬産業の十二五計画」では、
バイオ医薬品の研究開発を国家重点プロジェクトと定め、
新薬開発などに十一五計画の倍に当たる
400億元の予算を投入する見込みであることから、
開発力に優れる医薬品メーカーがこの恩恵に浴しそうです。

世界の製薬市場の動向をリサーチしている
『IMS Health』の予測によると、
今後5年間、中国医薬品市場は平均24%の成長を遂げ、
2015年末におけるその生産総額は3兆1000億元に達し、
世界第3位の規模を形成するとされます。
今後、関連企業の収益を左右するとされる要因は
次のものが挙げられます。

1.医療保険制度の充実:
現在、中国の基本的医療保険のカバー率は
95%以上(保険加入者数12億9500万人)に達し、
都市部と農村部の住民は基本的な医療保障を享受。
1人当たりの平均医療費も2000年の90元から
11年には200元へ大きく拡大していますが、
今後も公立病院の行政改革などを通じて、医薬分離を推進し、
ジェネリック薬品などの普及を加速。
患者負担のさらなる軽減を図る期通しです。

2.高齢化社会の到来:
2011年以降の30年間において、
中国における60歳以上の人口が全体に占める割合は
年16.5%のペースで増加。
これにともない癌、心臓血管病、糖尿病、アルツハイマーなどの
発病率が上昇すると予想されます。
現在、高齢者向けの薬の売上高は全体の25−40%を占めますが、
高齢化社会の本格到来とともにこの比率はさらに増加。
中長期な薬品需要を決起しそうです。

3.漢方薬需要の増大:
薬価の引き下げを受け、化学薬品の利益率は
15%前後まで低下していますが、
原材料価格の低下などを受けて、
“中薬”(漢方薬)の利益率は逆に拡大傾向。
2011年1−9月期における関連メーカーの売上高は
30−60%増加しています。
中央政府が中国独自の医療技術である中薬の普及、
発展に支援を行っていることもあり、
今後もこの傾向は継続しそうです。

上海政府傘下の医療資産が
『上海医薬』(02607)へ注入されたように、
国有資産監督管理委員会(国資委)などは
すでに地方政府と協力し
大手メーカーへの資産注入を開始しています。
この状況は流通業界も同じですので、
銘柄選択の際は足元の業績だけでなく、
有力な親会社がバックに控えているかなども
チェックしたいところです。

次回はこのセクターの有望銘柄をピックアップします。

(次回につづく)


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2012年6月8日(金

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当ページは、投資勧誘を目的として作成されたものではありません。
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個別銘柄にかかる最終的な投資判断は、ご自身の判断でなさるようお願いいたします。


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