夜の銀座をご存知?・浅川夏樹

酔ったふりして本当のことを

第63回
型破りと型なし

銀座で人気の小料理屋さんといえば8丁目にある「きく」です。
早い時間帯は、サラリーマンの方や
クラブの同伴のお客様でいつも満席です。
人気メニューは、小アジのフライで
サクサクしていて本当に美味しいです。

銀座には沢山の飲食店がありますが、
女性1人でフラリと立寄れるお店は以外と少ないのです。
「きく」は家庭的な雰囲気ですので、
お茶屋Barで働くスタッフは深夜にお腹が空くと
1人で「きく」に行って夜食を食べているそうです。

土曜日に、「きく」のお父さんと息子さんが、
お茶屋Bar にいらしてくださいました。
うちのお店がほとんど毎日、
出前を頼むので遊びにきてくれたのです。

お店では寡黙な息子さんが
「来る日も、来る日も下働きが続き、
何でこんなことをしなければならないのだろう、
と思ったことがある」
とおっしゃいました。
料理人の世界は、下積み期間が長いので、
実際に頑張っていらっしゃる方達は大変だと思います。

わたしは、息子さんに
銀座のクラブでお客様の歌舞伎役者さんがおっしゃった
次の言葉をお伝えさせていただきました。

「基本があって新しいことをするのは
『型やぶり』といって称賛されるけれど、
基本がなくて新しいことだけをするのは
『型なし』といって大成することはない」

歌舞伎の世界に限らず、世間から支持される方達は、
基本をおさえた上で、
自分の個性を発揮し、努力をしていらっしゃいます。

「きく」のお父さんも
息子さんに料理人の基本をいろいろと学んで
大成してもらいたいと思っておられるので
厳しく接しているのだと思います。
本来、人に対して厳しく教えられる方は、
本当はとても優しい人なのだと思います。

小さい経営であればあるほど、自分が築いてきたのは信頼ですし、
財産はお客様ですから、人に任せるのは勇気がいることです。

どんな仕事も10年続ければ、それなりに一人前になります。
ただ、好きな(向いている)仕事であれば、
努力を努力と思わないので上達が早いということでしょう。

人の優しさというのは、
つらい時を乗越えないと見えてこないものなのかもしれません。


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2011年2月5日(土)

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