第60回
遠くの温泉より近くの銭湯
銭湯が好きです。
本当は温泉とサウナも大好きなのですが
そうしょっちゅう行けるものではありません。
というわけで、自宅から徒歩3分の銭湯に
週1、2度は通うことにしています。
最初に行ったときは
「ひょっとしたら今流行のスーパー銭湯かしら?」
とワクワクしたのですが
入ってみると本当に戦前からの正統派銭湯なのです。
タイルで描かれているのは松島のような海に浮かぶ小島と松ノ木、
そしてその下にはなぜか泳ぐ錦鯉と亀の絵・・?
銭湯のタイル画ってダリのようにシュールな世界だったのですね。
湯船の壁にかかっている掲示板を読むと
「当銭湯のお湯は××石を使ったラジウム湯で
東京帝国大学の○○博士により効能が証明されました。云々」
「えっ!トウキョウテイコクダイガク!?
東大が東京帝国大学と呼ばれていたのは何年前なのかしら?」
とにかく戦前から存在していた銭湯だということはわかったのです。
戦災にもあわなかったのですね。
いつも番台に座っているのは
東大が東京帝国大学だったときから番台に座っています、
という風情の小柄なおばあちゃん。
長いこと
「おじいちゃんが死んでから、
息子さんと二人でこの銭湯を守っているのね。」
と思っていましたが、
あるときガラリと入り口の戸を開けたら
女湯の脱衣所に小柄なおじいちゃんが・・!
ご夫婦で営業なさっていることがわかりました。
しかし、この銭湯はいつまで存在してくれるのでしょうか?
いつ行っても客は2、3人。
5、6人いると「今日は混んでいるのね。」という感じ。
原油高による灯油とガソリン高騰のニュースを聞くたびに
「あの銭湯は赤字なのじゃないかしら?」と気にかかります。
ひょっとしたら銭湯を取り壊して賃貸マンションでも建てたほうが
よほど楽で儲かるのかもしれません。
東京都は歴史的建物を保存するために助成金を出せないのかしら、
とも思いますが、
客としてはおじいちゃん、おばあちゃんの
健康長寿をお祈りするしかありません。
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