第29回
印パ関係
インドの地政学的リスクを考える場合には、
まず印パ関係を押さえておく必要があります。
印パがお互いに領有権を主張して争っているカシミール地区は、
日本の外務省からも
退避勧告地域に指定されている地域となっています。
インドでテロの懸念で最大のものは、
イスラム過激派の動きでしょう。
そしてそのイスラム過激派は、
パキスタンを拠点に活動しているものが多いのです。
こういう背景から、
インド国内で軍事産業が集積しているのは、
パキスタンから離れた南部バンガロールになったのです。
それで、IT産業の中心都市もバンガロールとなったのでした。
一方パキスタンの経済は、
経済基盤の弱さに政治的混乱も重なり、
財政赤字の拡大等により2008年に経済危機に陥り、
IMFによる支援を受けました。
IMFプログラムの下経済改革を進めていますが、
進捗は遅れています。
印パ関係には対話の動きもありますが、
基本的に対立関係が続いています。
2008年11月に起きたムンバイでのテロでも、
パキスタンの武装組織の関与がありました。
これについて当時、何人かのインド人と話をしてみましたが、
インド人のパキスタンに対する憤慨感は
やはり激しいものがありました。
そういう状況ですので、
パキスタンでの仕事を嫌うインド人も多くいます。
本来インド人はどんな仕事にも貪欲なのですが、
反パ感情に加えて、パキスタンの治安面での不安から、
あまり積極的ではないようです。
それでもパキスタンで仕事をする場合には、
民族的に近い北インドの人とパートナーを組んで
行うのがいいでしょう。
こうした中、パキスタン政府は今年11月2日、
インドに対して貿易の最恵国待遇を与えることを決めました。
成長するインドとの貿易拡大による
経済の立て直しを優先したためです。
今後パキスタンの経済が発展すれば、
ビジネスのチャンスも増えていくでしょう。
インドとパキスタンを合わせた人口は、
中国を上回る規模ですので。
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