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         第34回 
        カースト制について(その2) 
        今回は、カースト制度の2回目です。 
        現在インド政府は、貧困の解消を最優先課題としています。 
          またシュードラやダリットあわせて、 
          人口の半数以上が被差別カーストであり、 
          大票田として彼らへの優遇策を次々と打ち出しています。 
        政府は公共事業関連の仕事や議会の議席、 
          大学の入学枠など 
          下層カーストのための一定の枠を確保しています。 
        例えば下層カースト出身の学生に対する公務員、 
          国営企業職員の優先就職枠は、 
          1950年では20%だったものが、 
          93年には49.5%にまで引き上げられています。 
          一方優遇の対象外の人は、これは逆差別だと反対しています。 
        ただ新しい産業で、カーストによる 
          就職制限の規定がないIT業界には、 
          このような優先就職枠も、 
          下層カーストに対する就職差別も全くありません。 
          インドのIT業界が完全に実力主義を貫けたことは、 
          インドのIT業界を発展させた要因のひとつと言われています。 
        さらに、指定カースト出身の政治家、 
          役人、判事なども増えてきています。 
          1997年にはインドではじめて 
          指定カースト出身のナラヤナン大統領が誕生しています。 
          また06年に最高裁長官になった、 
          K.G.バラクリシュナン氏もそうでした。 
        インド北部の、 
          インドで最も人口が多いウッタルプラディシュ州では、 
          ダリット出身の女性マヤワティ氏が率いる大衆社会党が 
          同州で21%いる最下層のダリットを中心に支持を集め 
          政権を取り、彼女は州首相となっています。 
        現在インドでは、1950年の新憲法で 
          カースト制に基づく差別は撤廃されていますが、 
          カースト制そのものの廃止は明文化されていません。 
        ただしカースト制度は、今日目に見えて弱まってきています。 
          特にカースト毎のコミュニティーが存在しない都市部では 
          カーストの影響はほとんどなく、 
          自分の属するカーストを知らない人すらいます。 
          ただ農村部では、 
          カーストに基づく生活規範や差別が今でも根強く残っています。 
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