第3回
日本人の金銭観を象徴する言葉「欲とニ人連れ」
そんなことを考えていくと、日本人のお金に対する考え方が、
見事に表われている言葉がある。
それは、「欲と二人連れ」という、
ほかのどこの国にもない言い方である。
言葉の意味は「欲心につられて奔走すること」(広辞苑)だが、
私の疑問はなぜ「二人連れ」かということである。
欲というのは、もともと自分の体の中にあるものだろう。
それを、わざわざ「二人」にして、
欲を自分とは別物のように表現しているところが、
おもしろいと思う。
日本人は、お金の話をしないわけではない。
ただ、人間というものは欲があってはいけない
と教えられてきているから、
お金に対する欲望を自分の身の中から追っ払ってしまった。
他の国の人は体の中に欲が同居しているのに、
日本人だけはいっしょに連れて歩いているのである。
「喉から手が出るほど欲しい」という言葉も、
日本人とお金の関係を表わす象徴的な言い方である。
よその国の人は、欲しいものがあれば欲しいとはっきり言うが、
日本人は呑み込んでしまう。
だから、こういう表現が生まれてくる。
日本人ももうそろそろ、欲しいものは欲しいと
言っていいのではないだろうか。
欲望は人間が基本的に持ち合わせているもので、
日本人といえども例外ではないからである。
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