目標は「中金」持ち!

第23回
銀行は現金の一時預かり所

銀行が預金者とお金を貸す取引先を区別して、
預金している人には原則としてお金を貸さず、
お金を貸している先だけをお客と思っている基本姿勢は、
高度成長期になってからも、
またバブルがはじけて
中小企業を融資先から締め出すようになってからも
少しも変わっていない。
それでも預金者がさして不平も言わずに、
コツコツと貯め込んだお金を銀行に預けているのには、
いくつかの理由がある。

まず第一は、まとまったお金を
自分の家に置いておくわけにはいかないからである。
銀行には数々不平不満もあるけれども、
たとえタダのような利息でも
(本当にタダ同然の利息になってしまったが)、
家に置いて空巣や強盗にとられるよりはましである。

つまり銀行は駅の荷物一時預かりと同じ、
人々のお金の一時預かり所であって、
預かり手数料をとられないだけましな存在だということになる。
ところが、最近では次々と銀行が倒産するので、
銀行に預金することに不安を覚える人が増えた。

聞いたところによると、
キャッシュを持って銀行に行ったのはいいが、
窓ロには持って行かずに、
貸金庫の中にしまい込んで帰る人もあるそうである。
昔は税務署に知られたくないお金にそういう保管法があったが、
ついに銀行の倒産を恐れてその挙に出る人も現われたのである。

いままでのところ倒産した銀行の預金は
政府が全額保証して無事払い戻されているが、
一人一千万円までということになったら、
あるいは銀行を替えて
分散預金をする必要に迫られるかもしれない。
一時預かり所としての銀行でさえも、
預ける方が大丈夫だろうかと心配する時代になったのである。

第二に、一時預けのつもりで
銀行に預けたお金が定期預金になったり、
普通預金のままで何年にもわたって、
あるいは、死ぬまで銀行に預けっばなしになるのは、
預金者の大部分がお金の運用法に無知だからである。
定期預金の金利が年六パーセントあった頃は
銀行に預けっぱなしにしておいても
それだけの金利がもらえたからまだよい。

その六パーセントに目をつけて、
不労所得に非課税はおかしいという理由で
二〇パーセントの源泉課税をするようになったが、
銀行預金をしているのは大半が資金の運用に不得手な庶民だし、
しかも老人の生活費の一部に充てられるものが多いから、
課税の根拠もかなりあやしげなものであるが、
にもかかわらず六パーセントの金利が支払われた時代でも、
経済の成長によって
物価は十年で倍に上がらなかった時期は一回もなかったから、
定期預金の金利で
物価高をカバーすることはできなかったのである。

したがって預金者の無知をいいことに
銀行から融資を受けた企業や政府は
インフレという形で貨幣価値の目減り分を
預金者にしわ寄せしたと見ることができる。
私が高度成長期に借金をして
マイホームを建てるのをすすめたのも、
こうしたカラクリを見てとった上でのことである。

ところが、それが一転してデフレになると、
物価は上がらなくなったが預金金利は低下の一途をたどって
タダ同然になり、銀行に預金をしている人たちの金利が
どこかに消えてなくなってしまった。

金利がタダ同然なら、
お金を借りたい企業も
タダ同然の低金利でお金が借りられるようになるかというと、
中小企業は思うようにお金が借りられないし、
銀行の預金と貸付金の金利差は預金の金利よりも大きいから、
預金者から金利をかすめとって
銀行の救済をやっているようなものである。

銀行は預金者が投資に無知なために
預金を預けっぱなしにしているのを見越して、
預かっている資金を米ドルに換えて
米ドルの金利を稼ぐこともできるし、
ドル建ての外国債に投資することもできる。
そういう形で外国に流れた資金が
アジアの通貨不安で都市銀行をピンチにおとしいれたが、
それがアジア地域だけにとどまらず、
アメリカの株価暴落や
それに連動したドル安円高に見舞われるようなことになると、
不良債権の整理によって回復に向かったかに見えた日本の大銀行が
再びピンチに見舞われるおそれがないとはいえない。

それでも政府が後ろについているし、
政府には紙幣を印刷する権限があるから、
銀行は潰れる心配はないが、
預金者としてはいままでどおり
お金の運用に無知なまま
お金を銀行に預けっぱなしにしておいてよいものだろうか。

しかも預金者の無知を前提として、
銀行が投資信託や直接投資に手を出して、
預金者のお金をそちらに振り替えさせようとすれば、
元本保証だったのが元本も保証しないことになるから、
銀行がこれまで貸付けによってかぶった損害が
預金者にまで及ぶのではないだろうか。

もとより銀行が悪意でそんなことをやるとは思わないが、
銀行にそういう理財の能力があるかどうかは
一応疑ってかかってもいいのではないか。

とすれば、銀行にお金を預ける第一の理由は
お金の一時預かり所というところで
とどめておいた方がいいと思う。
日本がまだ貧乏だった頃、
銀行がまだ今日ほど手広く仕事をやっていなかった頃の
銀行に対する庶民の物の見方は、
いまもそのまま通用するのである。





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2013年12月30日(月)

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