第27回
他流試合で通用するプ口になるのが当面の目標
ではどうすれば、こういったプロになれるのだろうか。
家庭で主婦がミシンを踏んで
自分で着る物をつくる姿はほとんど見られなくなったが、
そういう人たちをアマチュアとすれば、
お客のために服をつくって売る人はいずれもプロであろう。
しかし、何万人、何十万人もいるプロの中で、
世界中の耳目を集めるファッション製品をつくり、
自分の名前を冠してとぶように売れるデザイナーは
数えるほどしかいない。
そういう人になるための法則は必ずあるはずであり、
いずれそれに言及する機会もあると思う。
が、ここではとりあえずは
プロの仲間入りをすることをすすめたい。
プロになるためには専門教育を受ける必要がある。
ただし、専門教育を受けることによって
一人前になれる職業もあれば、
いくら教育を受けても才能がなければ成り立たない職業もある。
たとえば、小説家や作曲家は
いくらプロのための教育を受けても
上達できる保証のない業種といってよいであろう。
およそプロに属する分野は、
スポーツや絵画や声楽やデザインに至るまで
才能がなくてできるものではないが、
技術や専門知識の習得を欠いてできるものでもない。
ファッションデザインにしても、
専門教育のための学校がたくさんあり、
かつ大量にプロの養成をしている。
これらの学校や職業訓練所の出身者は、
プロを必要とする業界に就職をして
与えられた仕事をこなしていく。
その中から、やがて傑出したファッションデザイナーが誕生し、
カンサイとか、イッセイとか、ケンゾーとかいった
アメリカやヨーロッパにも通用する
有名デザイナーが現われるのである。
日本のサラリーマンはどんなエキスパートになっても今のところ、
会社内でしか幅がきかない。
他社が中途就職に対して扉を閉ざしていることもあるが、
いずれそういってもおられないときがくるであろう。
会社の金看板を背景にしなくとも、
他流試合で通用するプロになることが
ニュー・サラリーマンのさしあたりの目標になる。
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