目標は「中金」持ち!

第33回
自分の貴人は自分で探せ その3

私自身をふりかえってみても、
ある時点で自分がやりたいことがあると、
目標に向かって全力投球をする。
朝から晩までただひたすら
そのことに全精神を集中してくたくたになるまでやり通す。

たとえば三十歳のときに、
六年間亡命生活を送っていた香港から東京へ戻って
小説家を志したが、そのときは寝ても醒めても
小説を書くことだけを考え、売れない原稿と承知の上で、
俗にいう「柳行李が一杯になるまで」原稿を書き溜めた。

実力があれば名の現われるときがあるという人があるけれども、
誰かに認めてもらってその推輓を得なければ、
原稿などは雑誌社に採用してもらえるものではないのである。

私の場合は、たまたま当時、
流行作家になっていた檀一雄さんが
全く無名の私の原稿を雑誌社に持ち込んでくれた。
奥多摩で落石に当たって
慶応病院に入院していた檀さんのところへ、
毎週のように新作を持っていって読んでもらったが、
檀さんは「こんなときでもなければ、
人の原稿など読んでいるヒマがないが、
それにしても次から次へと一体、いつ原稿を書くのですか」
としきりに感嘆してくれた。

その檀さんが退院して自宅に戻る途中に、
わざわざ雑誌社に寄って私のためにかけあってくれたおかげで、
雑誌の編集者の目にふれるようになったが、
それでも私が直木賞をもらって脚光を浴びるようになるまで、
原稿は編集長の山と積まれた書類の下積みになっていた。
世の中というのはそういうものである。
だからといって、悲観することもないし、
かと言って「待てば海路の日和あり」というわけにもいかないが、
自分のめざしている目標に至るためには
借りられるだけの力は借りたいと思うのも人情だろう。

そのためには貴人がくるのを待っていたのでは
時間がかかりすぎるから、
自分で探しに行くに限るというのが私の経験則である。





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2014年1月22日(水)

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