目標は「中金」持ち!

第34回
退職金は老後に必要なお金の三分の一しかもらえない

サラリーマンをしている人なら、
五十五歳からハ十歳までに定年を迎える。
この頃は六十歳が多いようだが、
平均寿命が延びると同時に定年をもっと延ばしてくれ
という要望も強くなっている。

しかし、五十五歳から五十八歳に、
五十八歳から六十歳に延長するのにも
それぞれ十年もかかっているから、
六十歳を六十五歳まで延ばすのは、簡単なことでは実現しない。

年功序列給が普及している日本では、
高年齢層の高い給料は企業の負担になっており、
給与システムをそのままにして
定年だけ先へ延ばすことに会社側が難色を示している。

定年を先へ延ばすどころか、定年前に辞めてくれたら、
退職金のほかに割増金を支給するとか、
そこに至るまでの給与の半分を追加払いするとか、
早期退職をすすめる企業も増えている。
過剰社員を抱えた企業が贅肉おとしをやろうと思えば、
真っ先に目につくのは人件費であり、
なかでも高年齢層の高い給与である。
こういうことになるだろうことは三十年も前からわかっていた。

毎年、一定人数の従業員を採用すれば、
それから三十何年後に、
毎年、一定の定年退職者を送り出すことになる。
三十何年前は、退職金といっても、七百万円程度であったが、
それがみるみる一千万円になり、千五百万円にふくれあがった。

恐らく大量に従業員の採用をした高度成長期の新入社員が
定年を迎える頃は、
一人当たり三千万円にも達するだろうと私は見積った。

大きな会社になると、年に五百人、
千人という新規採用が珍しくなかった。
そういう人たちが定年になって
仮に平均三千万円の退職金をもらうことになると、
会社は退職金だけでも年に百五十億円とか、三百億円とか、
大へんな負担をすることになる。

大企業ならそのための積立金を計上するだろうが、
積立金は貸借対照表に数字として現われていても、
お金は現金で銀行に別途、預金されているわけではないから、
その分、借入れを起こすか、どこかから捻出しなければならない。

たまたま景気のよいときなら何とかなるだろうが、
経常益だってそれだけある会社は少ないし、
昨今のように不況に直撃されているときは、
退職金が支払えないということも起こり得る。

もちろん、それは会社側の事情だから、
そこで働いているサラリーマンにとっては、
会社に下駄をあずけておくよりほかないが、
仮に規約通りに退職金をもらえたとしても、
定年退職するサラリーマンにとって不都合なことがいくつかある。

一つは、まず退職金はいつの時代でも
老後の生活を支えるには不充分だということである。

三十年前に私は、
「退職金は老後に必要なお金の三分のーしかもらえないから、
あと三分の二は自分でつくらなければならない」と書いた。
それはいまも基本的には少しも変わっていない。

むしろいまのほうが条件や環境は悪化しており、
自分らの預金も含めて現金に対する金利は
うんと低下しているから、
金利で生活するのはますます困難になっている。
株も下がっているし、不動産も下がっているから、
資産の評価は逆に引っ込んだし、
安定した収入もあまり期待できない。

したがって定年退職後も悠々自適というわけにはいかず、
何らかの収入の道を講ずる必要に迫られる。
定年が近くなると、そういう不安が身近に押し寄せてくる。
男の厄年は五十五歳だと言ったのも、
そういった意味合いからである。

二つ目は、六十歳になってから退職すると、
死ぬにはまだ早すぎるし、
新規の事業をはじめるには遅すぎる。

男の平均寿命が七十六歳として、
六十歳まで生きた人にはあと二十年くらいの余命がある。
しかし、新規に第二の人生をスタートさせるには
年齢的に遅すぎる。
いままでやってきた仕事の延長線上で、
会社の嘱託でもやるというのなら別だが、
全く新しい仕事を始めるとなると、
夜討ち朝駆けに耐えられるだけの体力も必要だし、
困難に遭遇してもそれをハネかえすだけの気カも必要である。





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2014年1月24日(金)

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