第43回
株式投資は船旅のようなもの
株価はその時セの景気不景気、
また個別的な業績不業績を反映する。
だから八百円で買った株が千五百円にもなる代わりに、
五百円まで下がることもある。
こういう揺れに耐えられない人は、
もとより株には不向きであるが、
それは船に乗ると船酔いがして
寝込んでしまう人がいるのと同じである。
そういう人に「財産を株で持つこと」を
すすめるわけにはいかないが、
定期預金は陸上運送で、
株式投資は海上運送だと思えばわかりやすいかもしれない。
船に乗るのは安全か、と聞かれても困る。
今は大半の旅行者は飛行機に乗るようになったが、
荷物はやはり船に乗せる。
大事なお金を船に乗せて大海に出して大丈夫かどうかは、
船にもよるだろうし、
船長以下乗務員たちの舵の取り方にも左右される。
小さな船なら途中で難破する確率は高いが、
大きくても大和銀行や三菱自動車のように
ダメージを受けることもある。
そういうときは、株価も大揺れする。
しかし、よほどのことがなければ、
船はいつか港に着くもので、
どこの港で降りるかは、
お客である株主の自由意思に任されている。
ただし海の真ん中で降りると駄々をこねても無理で、
そういうときは海の中に飛び込むか、
ボートを下ろしてもらって
自分で港まで漕いで帰ってもらうよりほかない。
株式投資に慣れていない人は、
船に乗るのに慣れていない人のようなものである。
船に酔って吐いてしまったり、航海の途中で嵐に遭って、
救命ボートに乗り移るときのことばかり想像して肝を冷やす。
もちろん、最悪の場合も想定してみる必要はある。
だから大波に弱い老朽船や、
小さなヨットに乗って太平洋を横断するような冒険は
避けたほうがいい。
船といっても、コンテナ船もあれば、豪華客船もある。
航海日和もあれば、波の高い日もある。
定期預金だって期日がくるまでは下ろせないのだから、
株も自分の買った値段より
高くならなければ売れないものだと思えば、焦ることはない。
なまじ日々の相場が新聞に載っているために、
一喜一憂したりするが、
航海に慣れてくれば、波の高い低いくらいのことは
そう気にならなくなるし、
進路を変更するようなことにもならないものである。
定期預金から株式投資に財産を移すことは
そんなに困難なことではない。
陸に利がなければ、海に乗り出すのはごく自然のことであって、
いくら揺れても慣れれば心配するほどのことはないものである。
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