第52回
株は売った後に高くなる その2
実はこれが本当のやり方なのである。
株価は、先にも述べたように、
買う時点では安いか高いか判断する基準はないもので、
一定期間を経過して初めて、その結果が出る。
買ったときよりも高くなれば、安い株だったし、
買ったときよりも安くなっておれば、
高い株だったことになる。
そこで一定期間を経過した株価を振り返って統計をとってみると、
値嵩の株ほどよく上がり、
安い株はいつまでも安値のまま動かないという結果が出る。
それならば買ってからいっこうに上がらないだけではなく、
逆に下がる株はなかなか上がらない株だし、
仮に上がるとしても時間がかかるから、
いっそ思いきって売ってしまい、上がった株は逆に残しておく。
そうすると、自分の持ち株は上がった株ばかりになってしまい、
「上がる株ほどよく上がる」という原則が働いているとすれば、
目が覚めるたびに値上がりを一早受できることになる。
理屈はこの通りであるし、その通り実行すればまず間違いないが、
残念ながら、こうした投資法に徹することのできる人は
至って少ない。
たいていの人は、これとちょうど逆のやり方をする。
すると、上がらない株ばかり手元に残る。
しかし、買い値を割った株でも、三年たったり、
五年たったりするうちに、中には業績が一変して、
株価が出直り、過去の高値を抜いて新値をつけることも起こる。
そういった株はあまりたくさんないが、
全くないというわけではない。
ただ、買い値を割って下値を低迷する時間が長すぎると、
待ちくたびれて、我慢がしきれないということがしばしば起こる。
例えば、五百円で買った株が四百円とか
三百円をうろうろする期間が二年も三年も続いたとする。
その間に何回か五百円に近づく場面がある。
何年も辛抱したのだから、
今度こそ本格的な反騰だろうと思って売らずに我慢していると、
反発力は意外に弱く、腰くだけをしてまたもとの四百円に戻る。
こういう苦い経験を何回も積むと、
いよいよ本番がきても、
「まただましだろう」と思い、
五百円を突破して五百五十円とか六百円に上がると、
「もういい」「もう堪忍袋の緒が切れた」と
ばかりに売ってしまう。
すると、それから先が高いということになって
地団太を踏まされる。
|