第56回
ロケーションのいいマンションは空室にならない
私は少し前までスポーツ紙で
マネーのコラムを担当していた。
毎週一回、特集を組むほか、連載の執筆もし、
読者の相談にも応じていた。
スタートして既に十何年の歳月が経過していたが、
前週の続きの今週であっても、経済環境が刻々と変わるので、
突然の金あまりで株価も地価も史上最高値をつけたかと思ったら、
いつの間にかバブルがはじけて、
空前の不況になってしまった。
目の色を変えてワンルーム・マンションを探していた人たちが、
いまは抱え込んだ不動産をどうしたものかと思案に暮れている。
こんな時世になると読者の相談も、
「駅前に持っているマンションを売ったものでしょうか」
といったみみっちい内容に変わってきた。
駅前にマンションを求めるような人は、
「マンションはロケーションが大切ですよ」
という私のアドバイスに耳を傾けた人だから、
そんなに大きな損害は受けていない。
私は三十何年前に、都市という都市に
マンションが建つようになると供給過剰になるから、
(1)ロケーションのよいところ。
(2)施主及び建設会社が一流のところ。
そして(3)管理のいい会社。
わけても中古品を買うときは、
掃除が行き届いているかどうかを見てから決めてくださいと、
細かいところにまで言及した。
ロケーションのよい例として、私は東京でいえば、
銀座と渋谷と新宿を結ぶ三角形の中をあげたが、
いまのようにマンションに空室の目立つときでも、
これらの地域にあるマンションは
少々家賃を下げればすぐにもテナントがつく。
マンションを買うときに、駅前を選んだということは、
そうした考慮をしているということだから、
直接、私の本を読まなかったとしても、
似たような着想をしているということ。
したがって、空室のまま
何年も置きっぱなしになるようなことはない。
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