第60回
銀行金利の払えない借金はしない その2
(二)不動産は人口の集中する都会地か、
通勤可能な郊外に限定し、別荘地や
レジャー産業への投資には賛成しなかった。
友人たちで軽井沢や那須や北海道の開発を手がけた人たちから
意見を求められたときは、
いつも反対意見を述べた。
実需の伴わない不動産はいざというときは
弱い立場に立たされると思ったからである。
(三)自分が土地を買ってデベロッパーの役割をはたすときも、
逆に人が開発した物件を分譲で買う場合も、
細分して区分所有が可能なプロジェクトに投資するようにした。
たとえば一軒まるごと百億円のものを手に入れるのはよいが、
いざお金に困って処分しようとすると、
それだけのお金を持っている人を探すだけでも容易でない。
その点、二千万円か三千万円に分けて、
ちゃんと収入のあるものとして
他人に肩代わりしてもらうのは簡単である。
そういう細かい物件をいくらたくさん持っても、
大した金持ちにはなれないが、
個人の生活を維持していくためなら、
十室か二十室持っているだけでも充分であろう。
以上のような原則があって、
その範囲内で不動産を買うとなると、地価が上がりすぎても、
金利が高くなりすぎても、
自らブレーキがかかって借金ができなくなってしまう。
だから、マンションの値段が坪当たり百万円から
百五十万円までの頃は、
新しく土地を仕入れて業者がマンションを建てても、
二百五十万円か、三百万円のコストになってしまうから
恐れずに買いなさい、としきりにすすめたが、
マンションの値段が
坪当たり三百万円を超えるようになってからは、
自宅用の物を除いて一切手を出さなかった。
三百万円で買ったマンションはバブルのさなかに
坪当り一千万円にも値上がりしたが、
いまはせいぜい元値だから、
行って来いになっただけのことである。
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