第72回
虎に食われないですむ対策を考えて宝の山に近づく
いまはアジアの時代と言われているように、
アジアの全地域で経済が成長期に入っている。
そういう地域で投資対象を見つければ、
かつて成長期の日本であげた成績を、
もう一度再現できるのではなかろうか。
そうは言っても、中国や東南アジアは日本ではないから、
日本語も通じないし、お国柄や商習慣も日本とは違う。
そのうえ、政情も違うし、治安もそんなによくないと聞いている。
そんなところに生命の次に大切なお金を持っていって、
人にだましとられたり、没収されたりして
持って帰れなくなったら大変なことになる。
危ないことはやめておくに限る。
そう思う人は、もちろん、
国際化の時代の波にはうまく乗れない。
考えてみれば、どんな投資にもリスクはつきまとう。
国内で勝手知った人を相手に、
勝手知った銀行からお金を借りて事業を展開しても、
身ぐるみ剥がれて大損をする人もあれば、
銀行にお金が返せなくなって倒産する人もある。
国内だから安心だと思うのは錯覚である。
それに比べると、海外はもともと不案内なところだから、
最初から用心してかかる必要がある。
日本に比べれば、政情不安があるとか、法律が守られないとか、
経済が不安定だとか、さまざまのカントリー・リスクが伴う。
それでもやろうかという気を起こすのは、
成長経済を経験してきた人から見て、
これならお金が儲かりそうだというチャンスが
ゴロゴロしているからである。
そういうところで、チャンスをつかもうとすれば、
カントリー・リスクの中に身を置くよりほかない。
「虎穴に入らずんば虎児を得ず」と昔から言われているように、
虎に出会う危険をおかさずに
宝の山にありつくことはできないのである。
もしそうだとしたら、カントリー・リスクに
戦々恐々としてばかりいても仕方がない。
カントリー・リスクの中身がどんなものであるかをよく研究して、
どうすればそれを避けられるか、
対策を練ることである。
たとえば中国や東南アジアに進出した企業で
損をしたり失敗をしたりした企業が多いといっても、
大儲けをしたり、大成功をする企業もたくさんある。
その違いはどこからきたかを理解できれば、
リスクを避ける確率はかなり増える。
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