第83回
税金を支払う前のお金を使えれば効率がよい
サラリーマンがいまの日本の税法の仕組みの中で、
税引き後に「使える百万円」を捻出しようと思えば、
大変な努力が必要である。
だから、サラリーマンをやっていたのでは
中金持ちになるのは難しい。
どうしてかというと、所得が九百万円を超えてくると、
地方税を併せて税率は四三パーセントになり、
千八百万円を超えてくると、
五〇パーセントになってしまうからである。
百万円使えるためには、月に二百万円も稼がなければならない。
役員のボーナスに至ってはもっと苛酷で、
会社がいっぺん法人所得税を
四十何パーセント払ったその残りから支払われ、
その時点でまた個人所得税が五〇パーセントもかかってくる。
即ち会社で稼いだお金の二〇パーセントか
二五パーセントが手元に渡ればよい方で、
その中から「使える百万円」を捻出するのは
如何にも効率の悪いやり方である。
少しでも税法の知識を持った人なら、
誰でも税金を支払う前のお金を使う工夫をしようとする。
そのためには必要経費を認められる法人組織にして、
その段階でお金を使うよりほかない。
戦後の日本で雨後の筍のように会社が出現したのは、
個人の経費は認めないが、
法人のそれは認めるという法人優遇税制のもたらしたものである。
簡単な話、個人商店やサラリーマンでは自家用車を買っても、
その費用を所得の中から差し引くことができないし、
飲み食いの領収書を見せても、
交際費として所得の中から控除してもらえない。
それが個人経営から会社組織に変えただけで、
社長の乗用車の購入費用も減価償却の対象になるし、
ガソリン代や修理費用も会社の経費でおちる。
運転手を雇えるだけの余裕があれば、
その人件費も全部、会社に負担してもらえる。
名目は社用でも、その車で子供の幼稚園の送り迎えをしようと、
奥様のお買物に使おうと、
税務署が監視しているわけではないから、
社内から文句さえ出なければ
大目に見られるのがこの世の常識である。
同じように、税務署の認める交際費は会社の営業上、
役に立つお客を接待する場合に限られるのが建前であるが、
どこまでが会社用で、
どこからが私用なのかを区別することは難しい。
これまた、いちいち税務署員が立ち会っているわけではないから、
会社の交際費は会社の資本の大きさによって、
年に四百万円とか三百万円とか枠がつくられ、
資本金五千万円以上の会社は
全額認められないことで折り合っている。
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