第88回
これが天職と思えば全精力を傾けよ その2
株の諺に「休むも相場」という名言があるが、
他に本業があって、アルバイトかお遊びのつもりなら、
いくら休みが続いても平気だが、
「株がメシより好き」ということになると
ブラブラしていてもカッコがつかないし、
何とか相場がとれないものかとあせって、
お金を注ぎ込むと、
泥沼の中にはまり込んだような目にあわされてしまう。
毎日毎日イライラさせられた末に、
やっと観念して、やはりこういうときは
「見切りが肝心だ」と一大決心をして、
損を覚悟で株を投げる。
投げた結果、財産が半分に減るのはいいとして、
そのお金をそのまま銀行に預けておくだけの自制心はないから、
また次の株に手を出す。
巨億のお金を動かして株を買い占め、
腕力で押し上げる場合は別だが、
相場のないときに相場に身を任せているだけでは
いつまでも埒があかないに決まっている。
これでは相場がとれるどころか、
相場に足をとられてひどい目にあわされるのがおちだろう。
他に本職のある人は、
こういうときは忙しさにまぎれて
相場のことを忘れることができる。
信用買いや借金さえしていなければ、
原資が半分に減っていたとしても、
値上がりするまで静かに待つことができる。
このことは兜町に集まるプロ、セミプロと、
事業をやるかたわら株をやっている人と、
どちらが財産を持っているか見比べれば
すぐにもわかることである。
証券マンは株の売買を禁じられているから、
派手に株をやるわけにはいかないが、
仮りに親戚知人のロ座を借りて売買をしたとしても、
そううまい具合にはお金は儲からない。
毎日の株の上げ下げに気をとられると、
海岸に立って波の高い低いを見ているようなもので、
潮の流れが見えず、
魚の大群がどこを動いているかも気づかずにすんでしまう。
だから本当に成功しようと思えば、
株が近道であると考えるのは明らかに間違いだし、
またサラリーマンをやりながら
片手間に事業に手を出して
それでうまくいくと考えるのも間違いである。
少なくとも成功の糸口をつかむまでは全精力を注ぎ込んで、
寝食を忘れるくらいでなければ成功はおぼつかない。
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