第100回
失敗したときのためのブレーキを踏みながら仕事を運転する
私は特にお金儲けがうまいわけではない。
「金儲けの神様」と呼ばれたりしているが、
冗談半分と思って聞き流せばいいことだが、
人の金儲けの相談に乗るのも私の仕事のーつである。
以前、テレビに出演したときに
「実際に香港を牛耳っているのは四十人程度の金持ちですよ。
その四十人だけで
日本の外貨準備高と同じくらいの金を持っている」と言ったら、
司会者から
「その中に邱さんは入っていますか」と聞かれたことがあった。
「僕は自分で金儲けもしていますが、
いろんな人に金儲けのアドバイスをしています。
僕のヒントを基に稼いだ金も勘定に入れたら、
その四十人の中に入るかもしれませんね」と答えたのだが、
そんなことを言うと、香港の人などは
「なぜ金儲けのネタを他人に教えるのか。
儲かるなら自分一人でやった方がいいじゃないか」
と言って不思議がる。
でも、たとえ金儲けのネタを独り占めしたところで、
世の中の金すべてを集めきれるわけじゃない。
また反対に、それをみんなに教えてしまったからといって、
自分が金儲けのヒントを失うわけでもないのである。
金儲けのヒントなどは次から次へと
いくらでも生まれてくるのだから。
個人主義、金儲け主義の徹底している香港では、
経営コンサルタントという職業自体、
理解しがたい存在のようである。
私はしょっちゅう失敗を繰り返している。
いまでもまだ失敗の現役である。
にもかかわらず、倒産の憂き目にあわないですんでいるのは、
失敗したときのためのブレーキがあって、
危ないと自衛してブレーキを踏むと
自動的に止まる仕組みになっているからである。
私は何十回となく店を開いては閉めるということを
繰り返しているが、
不渡りを出したことはまだない。
手形を切ったことがないからである。
商売をやる人は、現金を支払えなければ、
手形で支払えばいいじゃないかと安易に考える人がいる。
カードで物を買うようなものである。
その場にお金がなければ、手形はやりくりに便利な存在だが、
いくら支払期日を先に延ばしても、
約束した期日は必ずくる。
だから、私は必ず現金で買う。
ロールスロイスのような高価な車を買うときも
必ずキャッシュの一括払いである。
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