第101回
失敗したときのためのブレーキを踏みながら仕事を運転する その2
商売をやるときも支払いは一切現金である。
現金で払えないなら、商売はやらないというのが、
私の商売の原則である。
反対に集金は手形のことがある。
手形でないと払えないという相手があるからである。
したがって、私が営業不振におちいって
商売をやめることがあっても、
未払いがなくて、未収だけが残っているから、
何とか債権者に追い回されないですんでいるのである。
そんな余裕のある商売のできる人はそんなにいない、
とおっしゃる人がいるかもしれない。
私とて全額自己資金で賄っているわけではない。
借金もするが、借金は資産の形でちゃんと残っている土地とか
建物を買う人に限っているのである。
たとえば、機械設備を買う資金とか、
運転資金には自己資金をあてる。
その資金もないときは、仕事そのものを断念する。
というのも、商売がダメになったときは、
機械も設備も二束三文で捨てにいくのにもお金がかかるし、
運転資金はとっくに消えてなくなっているからである。
その点、土地建物はそのまま残っているし、
高度成長時代なら、値下がりしていることもないから、
その手の銀行に引き渡せばよいし、
都合によっては会社を清算する元資にあてることも
できるからである。
こうした措置をとることを原則としたので、
第一次石油ショックのときに一年で七社も会社をやめたときも、
何とか恥をかかないですんだ。
以来、いつもブレーキを踏みながら、
仕事の運転をやっている。
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