第115回
生き甲斐を支える経済生活のプランを立てよう
幸いにも日本は「豊かな社会」になって、
サラリーマンの給与水準も世界に冠たるものになってきたから、
サラリーマンの経済生活が自営業者や農民に比べて
見劣りすることはなくなっている。
現に脱サラをして焼鳥屋をやりたいとか
ファッションの店を始めたいという人が
私のところへ相談に見えて、
「いまの年収はいくらですか?」と私に聞かれると、
五百万円とか、七百万円とか答える人が少なくはない。
「仕事を始めるのはよろしいですが、
いまの年収を維持するのはむずかしいですよ。
もしいまの倍の収入を得ようと思えば、
少なくとも三倍働くことを覚悟してください」
と私は答える。
一般サラリーマンの収入は、
その安定度も勘定に入れたら
普通の自営業者に比べてそんなに見劣りのするものではない。
その意味でもサラリーマンになる人が増えるのは
納得のできることであるが、
サラリーマンの生き甲斐ということになると、
また別のアングルからの検討が必要になろう。
「人はパンなくして生きるあたわず」であるが、
「パンのみにて生くるものにあらず」ということもまた
確かだからである。
豊かな社会になれば後者の比重は増えていく傾向にある。
したがって何が自分にとって生き甲斐なのか、
その生き甲斐を支えていくために、
経済生活をどういう具合にやればよいのか、
きちんとしたプランを立てておく必要がある。
どんな人でも、自分の仕事や
日常生活に不満を抱いたまま
長期にわたってサラリーマン生活を送ることはできないのである。
もしそうだとしたら、
人間は自分が現に送っている生活を何らかの形で正当化して
自分を納得させる必要がある。
サラリーマン生活を続けるのなら、
なぜ自分はサラリーマン生活を今後も送ろうとしているのか、
どの程度、いまの仕事に愛着を持っているのか、
愛着を持っているとしたら、
どういう具合に仕事を展開していけたら自分としては嬉しいのか、
仮にそれがなかなか自分の思い通りにならないとしても、
自分の才能や努カとも睨みあわせながら、
自分をどういう具合に納得させたらよいのか、
考えないわけにはいかないだろう。
|