第116回
心の満足にお金も労力も惜しまないのが充実した人生
サラリーマンがお金とあまり縁がないことは、
繰り返し述べた通りであるが、
縁がないといっても事業家に比べての話であって、
サラリーマンの間でも、理財にたけていて、
給与収入に匹敵するだけの資産所得や
利子所得を得ている人もあるし、
また仕事が面白くて、お金など全く問題外という人もいる。
仕事が面白くて個人的な収入など度外視できる人は、
お金をコツコツ貯め込んだ人に比べて、
精神的にはむしろ幸福な人といって間違いはないであろう。
つまり豊かな社会になればなるほど、
人はお金に執着するが、その半面、
生き甲斐の方がお金よりも更に重視されるようになる。
生き甲斐とお金のどちらに軍配をあげるかといえば、
生き甲斐に軍配のあがる時代になったのである。
もちろん、生き甲斐を感ずる生活を実現させるためには
お金も大切な手段のーつである。
お金があれば、欲しい物はたいてい、手に入るし、
たいていの望みは叶えられる。
しかし、お金はそんなに無限にあるものではないし、
まして宮仕えをしている身にそんなにお金があるわけもない。
お金は人並みに不自由しない程度にあって、
生き甲斐を優先させる生活が
現代人にとっては理想的な生き方ということになる。
では生き甲斐とは何か。
生き甲斐にも、高級品とか、普及品とか、あるのであろうか。
生き甲斐は、心の糧であり、
それを栄養分にして人間は生きていく。
だから是非ともそれを手に入れる必要があるが、
何が生き甲斐であるかは人によってそれぞれ違う。
仕事に生き甲斐を感ずる人もあれば、
子供を立派に育てることに生き甲斐を感ずる人もある。
セックスの相手を見つけることに
ひたすら情熱を燃やす人もおれば、
骨董品を収集することに恍惚感を覚える人もある。
生き甲斐の基準のまるで違う人に
何が生き甲斐として価値のあるものであるかを説くのは、
そもそも見当違いである。
生き甲斐は人によってまるで違うが、
それによってそれぞれの人が、
「心の満足」が得られることだけが共通点である。
その点では、買い物の心理もよく似ている。
人が何のためにお金を使うかは人によって違う。
違っているけれども、人それぞれに「心の満足」の最大を狙う。
それと同じように、限られた時間と限られたお金と
限られた環境で生き甲斐を得ようと思えば、
自分が考えた、自分にできる
「心の満足」の最大を追求することになる。
そのために、時間もお金も労力も惜しまないのが
人生の最も充実した生き方ということになる。
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