第120回
経験が活かせる場なら、五十歳からでも再出発できる
人は新規蒔き直しをやるといっても、
いままで那須の種を蒔いていたのが
胡瓜の種に変わるくらいのことはあっても、
百姓をやっていたのが突然、
海に魚をとりに行くような百八十度の転換はできないものである。
成功できる、できないは別としても、
人はそんなに遠くまで行けないものである。
まして四十歳、五十歳となれば、
いままで働いてきた分野か、その周辺か、
もしくはその川上、川下でアミを張るよりほかないものであり、
またそうなれば、成功の確率はうすいのである。
孫悟空が一跳び十万八千里のつもりで高跳びしても、
結局はお釈迦さまの掌の中から出られなかったように、
人間はいろんな可能性があるように見えても、
そんなに遠くまでは飛び出せないものなのである。
新聞社や雑誌社を退職した人が
結局は活字の世界から逃げおおせないように、
自動車や家電製品のメーカーで働いていた人は
その世界から離れられないし、
飲食店や水商売をやってきた人は職場を替えても、
同じ畑で仕事をすることになる。
それでも時代が変われば、商売のやり方も違ってくるし、
お客も、お客の欲しがる商品も違ってくる。
そういう変化のプロセスで
新しいスキマができてくれば、
そこを埋め合わせる新事業が成り立つようになるのである。
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