第130回
贈り物にはニ流の時計より最高級のスリッパ
これは役に立つことだからぜひ覚えておいてほしいのだが、
人に物をあげる、贈り物をするときにもコツがある。
どういうことかというと、
値段の高い高級品でランクの下の安いものを
人にあげてはいけない、
日用品のなかの最高級品を贈れということである。
たとえば、時計の安いものをあげても駄目なのだ。
一万円の時計なんて、もらってもあまりうれしくないだろう。
しかし、デザインが良くてはき心地のいい
一万円のスリッパをもらったら、相手はきっと喜ぶだろう。
ふつうはそんな高いスリッパなんて、
ほとんど誰も買いはしない。
だから「こんな高いもの、もったいない」と思ってくれる。
もらった人は大事に使ってくれる。
頭の悪い人は、あまり相手のことを考えずに物を贈る。
相手がめいわくがらない物といえば、
相手の家で必ず使うものをあげるのもひとつの方法である。
たとえばサラダオイルだとか、乳製品の詰合せだとか、
調味料セットだとか。
まあこれだったら無難ではあるが、それ以上のものではない。
相手に喜ばれ、強く印象づけるような贈り物ではないのである。
そこでたとえば、極上の醤油とか梅干しをあげるのだ。
ふだん何気なく使う醤油も、
手造りでていねいに造ったいい醤油は、
そこらへんで売っているものの味とまったく違うから、
それを知らなかった人はびっくりするだろう。
和歌山県で昔ながらの方法で造っている梅千しには、
本当に味わいのあるものがある。
それで値段はせいぜい三千円から五千円くらいのものだから、
高いものではない。
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