第138回
人生のある時期を越えたらお金を減らす算段を その2
家業というものがあって、
一家の財産を子々孫之まで伝えるのが当たり前だった時代には、
家業を温存することが家長の義務であった。
しかし、それができるためには、
いまのような高税率の相続税がないというのが前提であった。
戦後の税法はアメリカから輸入されたものであり、
それに「財産は一代限り」という社会主義的な思想も加わって
アメリカ以上に急進的な累進税率が適用されるようになったので、
どんなに莫大な財産でも
三代相続したら無一文になってしまう
という苛酷なことになってしまった。
そのため家業を継ぎたかったら、
家業は個人名義をやめて法人組織にするとか、
株主の名義変換を少なくとも
十年以上の長期計画で気長に少しずつ相続人に移すとか、
全く別の配慮が必要になってしまった。
それ以外の個人財産ということになると、
基本的に孤独のままコタツの中で事切れてしまう老人の持ち物と
何ら立場に違いはないから、
第三者の感想がそのままあてはまる。
貯金通帳をふところに入れたまま死ぬよりも
生きていて元気な間にもっと計画的に散財しなければ、
何のために粒々辛苦して
貯金をしたのかわからなくなってしまう。
つまり人間は未来の不安を解消するために、
人生のある時期はお金を増やす必要に迫られるが、
ある時期を超えると、今度は逆にお金を減らす算段を
しなければならなくなるのである。
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