第142回
自分の方からお手伝いさんや看護人を探しに行く時代 その2
ただし、そうは言っても、
日本人は自分たち夫婦だけでいきなり外国に行って、
そこで人生の後半を送ることはなかなかできない。
若いときから外国の生活に慣れていない人は、
日本の生活習慣が身についているし、
みそ汁や潰物のない生活にはとてもなじめないからである。
いまは東南アジアのスーパーでも
日本の食品はいくらでも売っているから、
それらの問題は何とか片付くとしても、
ふだんつきあう気のおけない仲間が必要だし、
病気になったときに診てもらう医者もいないと不安になる。
とりわけ定年後の老人になると、
日本の老人ホームの施設をそっくり
人件費と物価の安いところに移動するのでなければ
安心して住めないから、それがこれからの新しい商売になる。
日本で老人産業に従事している企業も、
熱海とか、湘南にばかり気をとられないで、
東南アジアに事業体を移すプランを立てるべきであろう。
というのも、人件費高で頭を壁にぶつけるのは、
輸出産業だけでないからである。
寝たきり老人の世話をするだけなら、
たとえばフィリピンから
家事労働者の出稼ぎを認めてもらえばさしあたりの用は足せるが、
日本では外国人労働者の入国に固く門を閉ざしているから、
寝たきり老人の方が外国に出かけて行くよりほかない。
寝たきりになってからでは外国だって入れてくれないだろうから、
まだ身体健全なうちから出入りしておくに限る。
お手伝いさんや看護人を必要とする生活は、
自分らの方から出かけて行く時代になったのである。
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