第144回
年をとったら失業に追い込まれるのは自営業者も同じ その2
私自身についていえば、
一昨年までは十二本の連載と
年に百二十回の講演をこなしていたが、
昨年は連載の大半が完結したのを機に、
連載も講演も半分に減らしてしまった。
本当のことをいうと、
私が自発的に仕事を半減すると宣言しなくとも、
早晩仕事は自然に減ってしまうことだろう。
それを見越して私が自らカット・ダウンしただけのことで、
おかげですっかり時間の余裕ができてしまった。
こんなことは四十何年にわたる文筆生活の中で
1度も経験したことのないことであり、
はたしてこれからどうなるのか、
我ながら興味深々で自分の行く末にかたずを呑んでいる。
自ら選んだこととはいえ
どう考えてもこれは新しい失業である。
失業者は新しい仕事を探さなければならない。
そう思って、昨年から次にやる仕事を探して、
アジア中を駆けまわるようになった。
昨今のような経済構造の変化を伴う大不況の中では、
多くの人たちが失業する。
ドイツでさえ失業率が10パーセントを超えたのだから、
日本だけが無事でいられるわけがない。
設備投資過剰で生産能力が実需をオーバーしている現状では、
製造業も流通業も失業者を大量放出する。
既存組織から流出された失業者を吸収できるのは、
恐らくサービス業以外には考えられない。
したがって次のベンチャービジネスは、
情報産業や通信産業も含めてサービス産業に集中するだろうから、
そのうち日本は世界一のサービス王国に
変貌することは間違いない。
新しい仕事を見つけたかったら、
そういう分野をめざせばいいのである。
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