伏見緑さんが語る「あなたの知らないドイツ」

第17回
DuとSie

「あなた」を意味する主語に、
ドイツ語には、Du(ドゥ)と
Sie(ズィ)の2つがあります。

文法としては、普通はSieを使う、
Duは、親しい間柄で使うとなっています。
お姑さんがお嫁さんに向かって
初めてDuを使うのは婚礼が終ってから、
など、何かとエピソードが付いて回るのが
このDuとSieの使い分けです。

しかしながら、Duには、大事な機能があります。
相手が「見知らぬ子ども」であっても「大人」が
話し掛けたり、注意したりする必要性があるときに使います。

フランクフルトの街の真ん中で、
最大ボリュームの音楽を鳴らしながら
電車に乗り込んで来た13歳ほどの少年がいました。
それを見るや、小さな子ども連れの若い母親が、
すかさず叱ったときの、Duの迫力には
聞いていた者、皆が縮み上がるほどでした。

「あなた!その音を止めなさい!」
その少年も縮み上がりつつ、口をもごもごさせて抵抗しました。
その言葉から外国人であると判断したこの母親は
なおも話を続けるのです。

「あなた。ドイツでは、電車の中でそんなことを
 してはいけません。あなたの国で
 そうやって良いのなら、あなたの国でおやりなさい。
 でも、ここはドイツです。
 ドイツにはドイツのモラルがあります。
 あなたのママは、そうあなたに教えていないの?」
 
この時、大人が見知らぬ少年に向かって
注意するのは“Du”の役割なのです。
もちろん、家庭で自分の子どもに向かって
日頃の呼びかけに使うのも“Du”です。
音楽は、私が記すまでもなく、止みました。


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2006年12月13日(水)

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