伏見緑さんが語る「あなたの知らないドイツ」

第31回
ドイツの高級温泉保養地で

今年は異様な暖冬です。
例年ならばこの時期、
最高気温が零度より上がることは滅多になく、
まるで冷凍庫の中を歩くような寒さになります。
この閉口するほどの厳しい寒さにも関わらず、
もっと緯度が高い北部ドイツやロシアから見ると、
フランクフルトの寒さ程度では、
「まだまだ厳しいうちに入らない」のだそうです。
確かに、このシーズン、越冬しに来た白鳥の群れで、
マイン川のほとりが埋まっています。

フランクフルトから電車で西に小1時間のところに、
ヴィスバーデンという高級温泉保養地があります。
白い湯気を立てて源泉が溢れる小さな公園、
コッホブルンネン。
広い英国式庭園のクア・パーク、
休養の合間に演劇や音楽を楽しむための
ヘッセン州立劇場。
高級カジノもあるクア・ハウス…。

昔から欧州の王族貴族が保養に訪れる場所とあって、
上品な街並みが自慢な、バーデンバーデンに次ぐ
温泉保養地として知られています。
米国関係の機関が多く、米国人をはじめとする
外国人が多く住む街でもあります。

このヴィスバーデンに、欧州陶磁器を扱う高級店が
最近、新規開店になりました。
この街には、小さいけれども
新しい高級専門店が三々五々に増えています。
どうして、ヴィスバーデンに?という疑問を持って、
この地を良く知る知人を訪ねました。

「この街の主なお客様は、アジア人や米国人ではなく、
ドイツの北方の都市やロシアから来た、個人経営者や医者様など。
皆、保養休暇をゆっくり楽しむために来ていて、
滞在中に買い物をしていかれるのよ。」

なるほど、高価な陶磁器を並べるお店で、
品物を見ていると一組、二組と老夫婦のカップルが
後から後から、扉を開けて入ってきます。
私の目から見ると、全く旅人らしくなく、
普段着で散歩を楽しむ周りの住人となんら変わりありません。

ポシェットやウエストポーチを身につけているわけでも、
よそ行きブランドもので身を飾っているわけでもなく
本当に目立たないのです。

見ているうちに、白い陶磁器の鉢が一つ、
同じく飾り気のない真っ白な花瓶が一つと、
派手なデザインではないけれど、決して安くはない、
西欧州の品物が、旅の記念に「お買い上げ」となります。
そっと部屋に飾って楽しむのだそうです。


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2007年1月15日(月)

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