伏見緑さんが語る「あなたの知らないドイツ」

第32回
ドイツを走る華麗な車

何度か郊外への用事で
ドイツの高速道路アウトバーン
(ドイツ語読みでは、オウトバーン)を通るうち、
ある日、華麗に疾走する1台の上等のポルシェを
生れて初めて目の当たりにしました。

左右に広がる深緑の麦畑の中のアップダウンを
速度を緩めることなく疾走する姿は、
丘を駆け抜ける駿馬のごとく、実にお見事。
人工の機械がここまで、毛並みを輝かせて走る
上等の馬のように、かくも美しく走るものか…
素晴しい!と痛烈に感動してしまったのです。

一目見て、これまでの自分の経験で見てきた「車」、
つまり、テレビの中のレースでしか疾走せず、
日常では移動手段の役割を果たし、
しかも大抵は渋滞や速度制限で
なかなか進まないものであった「車」という
乗り物に対する考えを一変せざるを得ませんでした。

車とは、美しく走るもの、
本来はその目的のためにある乗り物であること、
これを知ったのです。

アウトバーンでは、都市近郊や分岐点が多い場所、
道路工事中の場所、雨天などには制限速度が指定されています。
いわゆる、最高速度が制限されていない区域は
郊外に多くありますが、いくら無制限とはいえ、
普通の人間がコントロールできる速度には自然と限度があり、
滅茶苦茶に走っているわけではありません。
だいたい時速150キロ前後のスピードで走るのが一般的で、
時速200キロやそれ以上をコントロールできるのは、
よほど車に乗りなれた人に限られるようです。

追い越し車線を“疾走する”スタイルで走れる車は、
大抵、時速200キロ近くを出しています。
そして、その同じ車窓から、しばらくして、
その次に、私の横をシュッと
美しく走り抜けたスポーツカーが向こうの丘を駆け上がり、
最後尾をキラリと陽光を反射させ終えて…
丘を越えて、視界から消え去ろうとした瞬間には、
私も、決心し終えていました。
「よし、私もドイツで車を運転しよう!」

私は、日本で運転免許を取得していたものの、
それを得た年齢もかなり遅く、
その上、路上には一度も出ないまま、20年以上も経った
文句無しのゴールデン・ペーパードライバー。
この決心が、どれほどの大きな感動によるものか、
きっとお分かりいただけると思います。


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2007年1月17日(水)

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